総研大・核融合科学コース「夏の体験入学」を実施しました

 2023年8月21日から25日までの5日間の日程で、核融合科学研究所(以下、NIFS)において、「夏の体験入学」を開催しました。

 NIFSに併設されている国立大学法人 総合研究大学院大学(以下、「総研大」)先端学術院 核融合科学コース(以下、「本コース」)では、2004年から毎年「夏の体験入学」を開催しています。本コースの「夏の体験入学」では、総研大核融合科学コースの志望者獲得を第一義的な目的とし、更に、将来の核融合エネルギーの実現に向けた人材育成、社会への情報発信・広報等に向けた重要なイベントと位置付け、大学の1年生から4年生、高等専門学校の4、5年生と専攻科生、及び大学院修士課程1年生の参加者を募集しました。

写真1.総研大・核融合科学コース「夏の体験入学」の参加学生と教員との集合写真

核融合科学を構成する研究課題に取り組む5日間

 20回目となる今年は、38名の学生(内訳:大学生34名、高専生3名、大学院生1名)が参加しました(写真1)。参加学生たちは、研究所内にある宿泊施設「ヘリコンクラブ」等に宿泊しながら、核融合研究の最前線を体験しました。
 核融合科学を構成する研究分野は、プラズマ物理学、原子物理学、電気工学、低温・超伝導工学、材料工学、真空工学、シミュレーション科学など多岐にわたり、本コースにはその各分野を専門とする教員が揃っています。今回の体験入学では、プラズマ実験・核融合工学系から7課題、解析・理論・シミュレーション系から3課題の計10課題を実施しました (表1)。
 体験入学の1日目は、榊原悟コース長からの挨拶に始まり、担当教員から各研究課題のテーマ概要説明、各参加学生の自己紹介を行いました。その後、参加者は大型ヘリカル装置(LHD)の実験設備、並びにシミュレーション施設を見学しました(写真2)。参加した学生は、世界有数の研究設備を目の当たりにして核融合科学への興味を深めている様子でした。

表1.夏の体験入学実施課題

リアルな研究に触れ、研究者へのキャリアパスの興味関心を深めた

写真2.施設見学の様子
         

 2日目から4日目までは、朝礼で一旦集合し、前日の実習内容や感想をお互いに報告しあい、その後、配属された研究課題へと分かれて実習に取り組みました(写真3)。
 参加学生は皆、担当教員が実際の研究に使用している実験機器や計算機を用いながらの実習に感激している様子でした。2日目の午前に、榊原悟コース長による特別講義が行われ、参加学生は、プラズマ物理学の基礎、LHDに代表される磁場閉じ込め核融合プラズマ研究の概要や研究課題、核融合研究の歴史などについて学びました(写真4)。2日目の課題実習終了後には、研究者へのキャリアパスに関心のある学生を対象に、キャリアビルディングをテーマとした座談会を開催しました。本企画は任意参加でしたが、ほぼ全ての学生が出席し大盛況でした。NIFSの若手研究者をパネリストに迎え、どういった道筋を経て核融合科学の研究者になったのか、研究者になるために大事なことは何かなど、パネリストの発表と、それに対する学生との質疑応答が行われました。学生にとっては、研究内容に関することから私生活に至るまで、研究者から直接話を聞く機会が得られ、将来を考える上で大変参考になったと思います。

   
写真3.実習の様子
写真4.榊原コース長による特別講義の様子

結果と体験から学んだことを活き活きと発表

写真5.成果発表会の様子

 5日目最終日の発表会では、参加学生、課題担当教員、及び夏の体験入学関係者が参加して、発表時間10分・質疑応答3分の口頭発表を行いました。苦労して仕上げた発表資料をもとに、発表会参加者らに対して実習の詳しい内容の説明を行いました。学生たちは、結果だけでなく体験を通して学んだことを活き活きと発表していました(写真5)。質疑応答にも堂々と答え、研究発表のレベルの高さに感心させられました。発表会の後、榊原悟コース長からのコース紹介及び入学案内があり、引き続き開催された閉校式での榊原悟コース長の挨拶をもって、全日程を終了しました。

 最終日に参加学生が提出した夏の体験入学についてのアンケートからは、本事業への満足度が大変高いことが伺えました。また、ここ数年、過去に夏の体験入学に参加した学生が本コースを受験しており、総研大の広報事業としての成果が目に見えるようになってきています。夏の体験入学に参加した学生の中から、数年後、将来の核融合研究を担う研究者が現れてくれることを期待しています。なお、これまでの夏の体験入学の課題概要や参加学生の体験談などを総研大核融合科学コースのホームページ(https://soken.nifs.ac.jp/open/)で公開しています。

 最後に、夏の体験入学は、総研大の「新入生確保のための広報的事業」からのご支援により実施することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

(小川国大 構造形成・持続性ユニット 准教授 総合研究大学院大学 先端学術院 核融合科学コース 併任)