HOME > 教育 > 特別共同利用研究員 >核融合科学研究所の大学院教育協力に対する基本的考え方

特別共同利用研究員

核融合科学研究所の大学院教育協力に対する基本的考え方

核融合研究は,いまや制御核融合の工学的実証を構想するまでに進展している。しかし,実用核融合炉達成に至るまでにはまだ多くの困難があり,これを征服するという大目標を目指す核融合研究者には,これまでにも増して一層の研究努力が要請される。研究開発の対象は,従来のプラズマ理工学的な現象解明や技術開発にとどまらず,広範囲の理工学に属するものから人文科学や社会科学に関連する分野をも包含する幅広いものとなり,研究の方法や装置も,研究の進展に伴って必然的に一層の精密化,大型化が必要とされる。それと同時に,基礎科学研究や萌芽的研究へも裾野を広げ,従来の学問体系を越えた新しい発想の展開が大いに望まれる。
このような状況において,今後の核融合研究の飛躍的な発展と新展開を図る上で極めて重要かつ不可欠の要素は,これを担い得るフレッシュで有能な若手研究者の積極的な参入である。このために,我が国における核融合の学理研究の中枢としての役割を果たす大学共同利用機関として創設された核融合科学研究所が,その研究者を結集して大学院教育に積極的に協力し,若手研究者の新しい発想を引き出すべく努力することは必然の責務といえる。
 核融合科学研究所が大学院教育に協力し得る形態は,大きく次の三つに分類することができる。
(1) 核融合科学研究所では,現在,大型ヘリカル装置(LHD)計画が推進されており,LHDの実験が平成10年度より開始されている。また,核融合プラズマの閉じ込め物理及び関連のプラズマ物理等の解明の研究を,スーパーコンピュータを駆使した大型シミュレーションの独創的な手法を用いて組織的に行い成果を挙げている。現在,対象となる大学院学生の世代は,実用核融合炉を実現すべき中心的研究者層となるであろうことを考えると,研究者としての厳しい基礎的鍛錬を受けると同時に次代の研究に即応し得る組織的な研究方法も身に付けなければならない。このため先端的かつ組織的研究の推進の場への参加と,その息吹に直接触れる機会を提供することが重要である。
(2) 核融合研究は,人類の永久的平和生存への貢献をめざし,より効率的で安全なものを開発していく使命を持つ長期的研究である。このことを考えるとき,プラズマ理工学から,より広範囲な関連理工学を含む核融合理工学,更には,環境科学などをも考慮した総合的な核融合科学へと,次々と新しく展開する分野を包含した学問としての体系化が必然的に要請される。すなわち,原理的立場からの基礎研究,新しい概念を生み出す幅広い萌芽的研究,先端的内容を生かす応用的研究などと有機的関連を積極的に深め,絶えず新しく展開する学問として高めていく必要がある。このためには,核融合理工学についての専門的知識・技術のみならず,幅広い学識と洞察力を備えた人材を養成していくことが求められる。このことは核融合研究の学問分野としての長期的展開を支えるのみならず,広く社会の発展に貢献し得る人材の養成にもつながるものと考える。
(3) 核融合科学研究所は,先にも述べたとおり全国に開かれた大学共同利用機関である。このことから,(1)及び(2)における次代の核融合炉を具体的に目指す専門研究者や,核融合科学という絶えず拡大・進化する学際分野の学問的体系化に貢献し得る人材の養成という,総合的観点からの大学院教育は言うまでもなく,個別的なテーマに関する研究・教育の指導における協力も,当研究所の成すべき大きな役割である。すなわち,研究所の各研究者,あるいは複数の研究者が行っている先端的な特定の研究課題について,専門的な立場からの研究指導にも力を注いでいく。
 大学院教育を行うに当たっての具体的な方法の柱として,平成4年度から,核融合科学研究所の独自の教育カリキュラムにより,核融合研究者の養成を目指すため,総合研究大学院大学の教育・研究に参加している。総合研究大学院大学は,昭和63年10月に我が国初の独立大学院(学部を持たない大学院だけを置く大学)として発足し,現在,関係する大学共同利用機関法人及び独立行政法人との緊密な連係及び協力の下に運営されている。本研究所は,総合研究大学院大学物理科学研究科の下に,核融合システム講座及び核融合シミュレーション講座の二つの大講座からなる核融合科学専攻として参加し,優秀な研究スタッフ及び高度で,かつ,優れた研究環境を生かして学術の理論・応用を教育・研究することにより,上記(1)の目的の達成を図るものである。
さらに,本研究所は,名古屋大学工学研究科及び理学研究科をはじめ,国内外の各大学・研究所との交流及び連携を深め,これを通じた共同研究の充実・発展と大学院教育面への反映を強化することにより,上記(2)の目的に適合したより密接かつ実質的な協力体制の実現を目指している。
 また,大学院教育における具体的な方法のもう一方の大きな柱として,既に制度として機能しており,本要項で募集を行う特別共同利用研究員受入制度がある。この制度は,全国の国公私立大学の大学院に所属する学生を特別共同利用研究員として受け入れ,本研究所の特質を生かし,学生の所属する大学院と協力して,上記(3)の内容を積極的に実施することにより大学院教育に寄与している。本制度は,平成元年度の研究所発足と同時に開始され,これまで教育・研究上極めて有効な実績を挙げており,その役割は,今後一層重要になると思われる。