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IAEA核融合エネルギー会議で、核融合科学研究所の研究成果が注目!

 2018年10月22日から27日、インドのアーメダバードで、国際原子力機関(IAEA) 核融合エネルギー会議(Fusion Energy Conference、以下、FEC)が開催されました。これは、IAEAが主催する核融合研究分野における最も権威がある世界最大規模の国際会議で、「核融合研究のオリンピック」とも言われています。2年ごとにIAEA加盟国のいずれかの国で開催され、今回で27回目を迎えました。前回2016年の第26回FECは、IAEA主催、核融合科学研究所(以下、研究所)と文部科学省とが共催で京都において開催され、40の国と地域及び2国際機関より1,000人を超える参加者がありました。
 今回のFECには、39カ国から700人以上の参加者がありました。日本からの発表は83件(うち口頭発表は17件)、研究所の発表は31件(うち口頭発表は6件)でした。
 研究所の大型ヘリカル装置(以下、LHD)の重水素実験結果は、この会議で大きく注目されることとなりました。特に、最終日の総括(サマリー)では、スライド冒頭の1ページ目と2ページ目で、LHDが取り上げられました。まず、LHDの重水素実験開始がドイツのヘリカル型装置W7-Xと並んで、最も注目されるトピックスとして1番目に紹介され、LHDの1億2千万度のイオン温度達成のグラフが引用されました。2ページ目では、プラズマ閉じ込めの同位体効果(1)の解明が重要であることが指摘され、LHD及びJET(EUが有する世界最大のトカマク型装置)の同位体効果に関する研究成果が引用されました。これらは、核融合に関する世界最大の会議で、核融合研究におけるLHD研究の重要性を示したものです。
 ほかにも、将来の核融合炉のブランケット(2)の材料として期待されている、高温でも丈夫で、加工にも溶接にも適したバナジウム合金の開発に成功したことも注目され、この会議での発表がきっかけとなって、海外のサイト(ドイツ、ポルトガルなど)でも紹介されました。核融合炉で使用できるバナジウム合金は、加速器や宇宙分野など他の分野での応用も見込まれています。(3)
 また、数値シミュレーション分野の成果として、研究所が開発した「高速粒子とプラズマのハイブリッドシミュレーション」(4)が注目を集めています。これは、プラズマ全体を一つのまとまり(磁気を帯びた流体)としてマクロに捉えるシミュレーションと、プラズマを構成するミクロの粒子の動きについてのシミュレーションを連結したプログラムで、プラズマの振動などの物理的ふるまいの予測精度を大きく向上させるものです。研究所から関連する4件の発表があったことに加え、中国やイタリアなど、世界中の研究機関からもこのプログラムを用いた発表があり、総括でも取り上げられました。
 以上のとおり、今回のIAEA-FECでは、研究所発のトピックスが数多く注目されました。
 次回は、2020年10月にフランスのニースで開催される予定です。

(1)  同位体効果…水素の同位体である重水素は、普通の水素(軽水素)と同じ電荷を持っており、化学的な性質は同じだが、質量が軽水素の2倍と重い。この重水素を用いたプラズマでは、軽水素を用いたプラズマよりも、熱や粒子の閉じ込めが改善し、温度などプラズマの性能が向上することが、これまで世界各国で行われた実験でわかっている。これを同位体効果と呼び、今回、ヘリカル型LHDの重水素実験においても観測された。質量の増大がどのようにしてプラズマ性能の改善につながっているのか、その詳しい物理メカニズムはわかっておらず、プラズマ物理・核融合研究当初からの長年にわたる最も重要な未解決問題の一つとされている。
(2) ブランケット…核融合炉内部のプラズマを取り囲むように真空容器の内側に配置される機器。他の機器をプラズマの熱などから保護するとともに、プラズマ中の核融合反応で発生する高速の粒子を吸収することで発熱する。この熱を、冷却材を通じて外部に取り出し、発電に用いる。プラズマを包む毛布のように見えることから、英語で「毛布」を意味するブランケットと呼ばれている。
(3) 参照:核融合炉を造る新素材の開発-高温でも丈夫で、加工にも溶接にも適したバナジウム合金の開発に成功-
(4) 参照: 高速粒子によるプラズマの振動を解明—新しいシミュレーション手法を開発—

IAEA-FECで研究成果の発表を行う森﨑友宏・研究総主幹
IAEA-FECで研究成果の発表を行う森﨑友宏・研究総主幹