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市民学術講演会「宇宙線イメージングによるエジプトのクフ王のピラミッド調査」を開催しました。

 2018年11月23日(金・祝)、土岐市産業文化振興センター・セラトピア土岐で、市民学術講演会「宇宙線イメージングによるエジプトのクフ王のピラミッド調査」が開催されました。講師は、森島 邦博先生です(名古屋大学高等研究院・特任助教)。この市民講演会は、第27回国際土岐コンファレンスに続いて、行われました。
 「宇宙」と「ピラミッド」というロマンを感じるキーワードに惹かれたのか、会場は開始30分前にもかかわらず、聴衆でいっぱい。さらに、別室で用意した中継用のサテライト会場もいっぱい。結局、メイン会場にも立ち見があふれ、メイン・サテライト合わせて280名の参加者となりました。
 素粒子物理が専門の森島先生。今回の講演内容は昨年11月にNHKスペシャルでも取り上げられて、見た記憶のある人も多かった模様。まずは「宇宙線とはなにか?」から。宇宙線は宇宙空間から絶えず、私たちのからだに降り注いでいます。非常に透過力が高いのですが、そんな宇宙線もコンクリートに吸収されて減衰してしまいます。その性質を利用して、宇宙線を検出する写真フィルム「原子核乾板」を使って、人間より大きなもの、例えば、ピラミッドや火山の巨大な構造物の中身を知ろうというもの。ちなみに、この原子核乾板は森島先生たちのグループのお手製だそうです。
 そして、いよいよピラミッドの調査の話題へ突入。「スキャンピラミッド」と呼ばれる、エジプトやフランスとの国際共同プロジェクトです。エジプトには200以上のピラミッドがあります。今回調査したのは、その中でもキザの3大ピラミッドの一つ「クフ王のピラミッド」高さはなんと147m。この「クフ王のピラミッド」の中の「女王の間」という部屋の床に、上記の写真フィルムを敷き詰めて並べます。ところが、宇宙線はすぐには感光しません。150日間置いて、ようやく宇宙線を検出することができます。その後、まずエジプトの博物館に持ち込んで、現像・チェックをします。さらに、日本に持ち帰って、3次元フィルムスキャナーを使って、宇宙線の軌跡を分析します。その結果、「大回廊」と呼ばれる通路の真上に謎(未知)の空間があることを発見しました。この結果は、国際的な科学論文誌「ネイチャー」にも掲載されました。今後は、ピラミッドの外側に近い「大回廊」に検出器を置いて、より高い精度で観測したいとのことでした。
 この宇宙線を使ったイメージング、今後の展開としては、考古学遺跡、例えば、ナポリの市街地の地下遺跡への調査が期待されています。他にも、原子炉・溶鉱炉などのプラントの内部診断や、火山・断層・洞窟など地球惑星科学分野への応用も期待されています。
 講演後の質問も、会場内から活発に飛び出しました。「謎の空間の場所がわかったら、調査するのか?」「移動中に原子核乾板が感光してしまわないか?」「王の間に置いた方が、詳しい結果が出るのではないか?」残念ながら、「王の間」の調査の許可を取るのはなかなか難しいそうです。それでも、聴衆の興味はつきないまま、大盛況のうちにこの講演会を終えました。