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重水素実験について

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目的

将来の核融合発電所を実現するためには、温度が高く、高性能のプラズマの性質を詳しく調べ、理解する必要があります。水素に代わって重水素*1を用いるとプラズマの性能は向上します。大型ヘリカル装置では、核融合発電の実現に向けた学術的な研究をさらに進め、核融合発電所の設計を可能にする基礎的なデータを取得するために、重水素を用いたプラズマ実験を行います。プラズマの性能を向上させることが目的で、核融合反応を起す実験ではありません。

重水素実験の目的

  • 現在より高温、高性能のプラズマを実現して、その性質を研究すること
  • 将来の核融合発電所の設計を可能にするデータを得ること
*1 水素の同位体、天然にも存在し、無害

重水素実験の概要と安全管理

重水素実験では、使用した重水素ガスの最大でも1万分の1の割合で核融合反応が起こり、放射性物質(トリチウム)と放射線(中性子)が発生します。1回3秒の実験で発生するトリチウムは、最大でも400万分の1グラム(1億ベクレル)で、放射性物質として扱う必要のない微量ですが、重水素と一緒に水の形で回収し、日本アイソトープ協会に処理を依頼します。中性子は、建物の2m厚のコンクリート壁で遮へいして1千万分の1に減衰させるため、外部へ漏えいすることはありません。 なお、トリチウムと中性子が発生するのはプラズマがついている時だけで、プラズマが消えると即座に発生は止まります。

安全管理の方法

  • 発生するトリチウムは僅か*2ですが、トリチウム除去装置を通し、回収・処理します
  • 除去しきれなかった分は、研究所の管理値(0.0002ベクレル/cc、法令*3の25分の1)以下であることを確認して、排気塔から放出します。その影響は、研究所の門衛所のところにずっと立っていても、体内に元々あるトリチウムの15分の1以下です*4
  • 中性子は実験建屋のコンクリート壁で遮へいします*5
*2 1回のプラズマ生成で4百万分の1グラム。これは夜光時計に使用されている量の3分の1
*3 排気中又は空気中の濃度限度 0.005ベクレル/cc (3月間についての平均濃度)
*4 遠方ではさらに小さくなります
体重60kgの人には50ベクレル程度のトリチウムが含まれています
*5 壁を通過する放射線は、研究所の門衛所のところで年間0.002ミリシーベルト(自然に受ける放射線の1000分の1以下)の影響。遠方ではさらに小さくなります

原子力施設ではありません

重水素実験では、微量の放射性物質と放射線が発生しますが、大型ヘリカル装置はプラズマ実験装置であり、ウラン燃料を用いたいわゆる原子力施設ではありません。加速器などの学術研究施設や放射線を取り扱う病院と同等な管理を行います。

プラズマ実験は安全です

プラズマとは、希薄な気体が高温になった状態です。真空状態で生成されるため、原理的に爆発することはなく、装置が損傷すると空気が入って即座に消えてしまいます。高温ですが、希薄なので、周りの壁を溶かす力はなく、簡単に、瞬時にプラズマを消すことができます。

プラズマを消す方法

  • 加熱装置のスイッチを切る、または加熱装置への電気を止める*6
  • ガスの供給を止める
  • 逆にガスを入れて、圧力を上げる*7
*6 停電時にはプラズマは消えます
*7 装置が壊れて空気が入っても、プラズマは消えます

重水素実験の実施方法

重水素を使った高性能プラズマ実験では、1回、1回、3秒という短時間のプラズマを生成します。3秒間で消えてしまいます。*8 そのため、何か問題が発生しても、そこで実験を停止すれば、後は何も起こりません。

プラズマ生成の頻度と時間

  • 1回、1回、3秒の間、プラズマを生成します 。

*8 はずみ車発電機から電気を供給するので、3秒以上は生成できません

災害時の対応

災害に備えて、即座に実験を停止する手段を用意します。

災害に備えて

  • 震度4以上の地震、緊急地震速報で自動停止します
  • 災害時は手動でも実験を停止します
  • プラズマの生成の開始は、1回ごと手動で行います
  • 災害時は直ちに消防署、警察署、地元自治体に通報します