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平成22年1月7日

大型ヘリカル研究部プラズマ制御研究系の論文紹介
 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 プラズマは磁力線に沿って移動しやすいという性質があります。核融合炉のプラズマであれば、磁力線を数センチ横切る間に数百メートル以上もの距離を磁力線に沿って走ります。最近注目を集めている太陽観測衛星「ひので」の観測では、太陽表面の大気(プラズマ)が磁力線に沿って宇宙空間に猛烈なスピードで流れ出ている様子がとらえられています。核融合炉では、核融合反応による燃焼を終えた灰のプラズマを、この性質を利用して炉外に取り出して処理することにしています。この役割を担う部分をダイバータ(divertor)と呼びます。ダイバート(divert)とは“わきにそらす”という意味で、燃焼を終えた灰のプラズマを磁力線に沿ってダイバータ室まで安全に導く、つまり本体のプラズマから“そらす”役割をします。下記の論文、

“高密度ダイバータプラズマにおけるプラズマ輸送特性への3次元幾何学効果”、 小林政弘 他、プラズマ・核融合学会誌 第85巻 2009年 393頁

は、ダイバータ室に導かれるプラズマの動き(輸送)が、磁力線の形とどのように関係しているかについて調べたものです。ダイバータプラズマ輸送の研究では、効率良く灰プラズマの排気を行うためにダイバータの磁力線の形をいかに最適にするかということが、重要な研究課題となっています。しかしながら、磁力線形状を、磁場を作るコイルの配置や電流を徐々に変えて最適化しようとすると、普通に考えていた以上に磁力線の形が劇的に変化してしまうといった現象が、時折起こります。このような磁力線のことを「統計的磁場構造」と呼びます。磁力線の振る舞いが“統計的”になり、容易には捉えにくいということからこのような名前がつけられました。このような現象は、しばしば磁場閉じ込め装置で起こることが分かっています。下記の解説、

“統計的磁場構造中のプラズマ輸送”、小林政弘 他、プラズマ・核融合学会 第85巻 2009年 221頁

では、そのような磁場の状態におかれたプラズマの輸送について過去40年にわたって行われてきた、様々な装置における実験や数値計算、理論モデルなどによる研究成果がまとめています。
 この分野の研究は、まだ未解明の部分が多く残されていますが、その一方で、このような磁場の性質を逆に利用してダイバータプラズマを制御しようという試みもなされています。核融合プラズマを生成するために炉心のプラズマの密度を上げていくと、ダイバータプラズマの温度はどんどん下がっていきます。核融合炉炉心プラズマの温度は数億度まで達しますが、ダイバータプラズマの温度が1万〜10万度くらいまで下がると、可視領域の光を激しく発します。このような激しく光るプラズマは通常、不安定になりやすく、炉心プラズマを冷やしてしまうことがありますが、上記論文にあるこれまでの研究を活かしてダイバータの磁場構造をうまく作ることにより、このプラズマを安定に制御することに成功しました。この成果は国際的にも評価され、昨年の米国物理学会プラズマ物理部会の招待講演に下記の論文として採択されました。

“Detachment stabilization with n/m=1/1/ resonant perturbation field applied to the stochastic magnetic boundary of LHD”, M. Kobayashi et al., Submitted to Physics pf Plasmas.

 “地上に太陽を”の実現を目標に、日々、プラズマと磁場の織りなす神秘に迫る研究を続けています。


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