<E-Mailによる情報 No143>
核融合科学研究所 >> 一般の方へ >> 研究活動状況 >> 2億3千万度の電子温度を達成
 

平成23年2月21日

2億3千万度の電子温度を達成

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所


 本年度の大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験は、1月27日に終了しました。昨年の10月14日に開始して以来、7,000回を超えるプラズマ生成を行い、様々な成果が得られましたが、その中から1つ、トピックスを紹介します。
 プラズマはイオン(原子核)と電子がバラバラになった高温度の電離ガスですが、電子レンジでも使われているマイクロ波を用いると、プラズマ中の電子を加熱することができます。核融合科学研究所では筑波大学と共同して、プラズマ中の電子を加熱するためのマイクロ波装置、ジャイロトロンの開発を行っています。
 ジャイロトロンは電磁波であるマイクロ波を発生させる大型の真空管ですが、LHDの実験に使用するために開発されたジャイロトロンは、全長約3メートル、重さはおよそ800キログラム、発振電力は1,000キロワット以上にもなります。発生するマイクロ波の周波数は77ギガヘルツで、1秒間にプラスとマイナスの電気が770億回も振動しています。一般の家庭で使用されている電子レンジのマイクロ波の周波数は2.45ギガヘルツなので、その約31倍になります。また、発振電力も電子レンジの1,000倍以上です。
 ジャイロトロンは世界中の中・大型の核融合プラズマ実験装置で使われていますが、1,500キロワットの出力が実用上、これまでの最高でした。LHD用に開発されたジャイロトロンでは、各部の設計を最適化し、運転方法を工夫することによって、これを大きく上回ることができ、1,800キロワットの出力で1秒間の運転に成功しました。
 この開発した大電力ジャイロトロンをLHDのプラズマ実験に使用しました。昨年11月に行われた実験では、開発してきた3本のジャイロトロンを用いて、3,400キロワットのマイクロ波をLHDに入射し、プラズマ中の電子温度を2億3,000万度にまで高めることに成功しました。これは、昨年度に得られた1億7,000万度を大きく更新したことになります。一方、プラズマ中のイオン温度の最高値は現在6,500万度ですが、このイオン温度を高める研究については、別の機会にまたご報告します。
 ジャイロトロンは、核融合プラズマ加熱用のマイクロ波発生装置として、大出力で長時間の運転ができる唯一の発振装置です。核融合発電を実現するためには、このような装置の開発を進めながらプラズマの性能を高めていく必要があります。研究所では将来の核融合発電を目指して、LHDでのプラズマ物理研究と並行して、ジャイロトロンなどの加熱装置や周辺装置の開発にも積極的に取り組んでいます。


以上