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平成23年5月9日

高エネルギー粒子研究 −高速の粒子を閉じ込める−

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所


 平成22年度の大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で得られた成果を紹介しています。今回は、プラズマ中を高速で動き回る高エネルギー粒子の振る舞いを調べる、という課題に取り組んでいる高エネルギー粒子研究を紹介します。

 高温プラズマを生成、維持するためには、プラズマ中のイオンや電子を加熱しなければなりません。代表的な加熱の方法に、外部から高速(高エネルギー)の粒子をプラズマに入射させて、入射した粒子のエネルギーでプラズマを加熱する粒子ビーム加熱があります。また、電子レンジで使われているマイクロ波やFM周波数の電波などの電磁波をプラズマに照射して、プラズマ中の特定の一部の粒子(電子またはイオン)にエネルギーを与え、それにより高エネルギーとなった粒子がプラズマを加熱する電磁波(波動)加熱もあります。いずれにしても、こうした高エネルギー粒子がプラズマから逃げずに閉じ込められていることが、プラズマを加熱するのに欠かせない条件となります。将来の核融合プラズマ発電では、核融合反応により発生した高エネルギーイオンがプラズマを加熱することにより、プラズマ燃焼が維持されるため、高エネルギー粒子の振る舞いとその閉じ込め性能を調べることは、核融合発電を実現する上で重要な課題です。
 今回の実験では、プラズマ中の高エネルギー粒子のスピード(速さ)を測るため、協同トムソン散乱という計測法を適用しました。これは、周波数の高い電磁波をプラズマに入射し、高速粒子により散乱された電磁波の周波数と強度を調べることにより、イオンの速度とその存在割合を求める方法です。野球でピッチャーの球速を計測するスピードガンでは、ボールに向かって電磁波を照射して、その反射波のドップラーシフトから速度を測定していますが、それと同じような原理です。ドップラーシフトは、救急車が近づいたり遠ざかったりするときにサイレンの音色が変わる現象として知られています。さて、この協同トムソン散乱計測をLHDに適用するに当たって、電子加熱用の大電力のマイクロ波を入射波に用いています。今回の実験では、このマイクロ波の品質と受信器の性能を向上させることにより、測定の精度を上げることに成功し、より詳細な情報を得ることができました。
 一方、磁場に閉じ込められた高エネルギー粒子は、プラズマ中をグルグルと回りますが、ある条件ではこの高エネルギー粒子自身の動きにより電波(波動)が発生し、それが原因となって、高エネルギー粒子がプラズマから逃げてしまうことがあります。そうしたことを詳細に調べるため、発生する波動の位置や周波数を調べました。また、粒子が衝突すると発光するシンチレータという素子を内蔵した検出器をプラズマの近くまで挿入して、この波動によりプラズマから飛び出してくる高エネルギーイオンを測定しました。LHDでは、こうした高エネルギーイオンだけではなく、高エネルギー電子の振る舞いについても、電子を加熱する実験を利用して調べています。
 このように、平成22年度の実験では、高エネルギー粒子の振る舞いに関して多くのことが明らかになってきました。今後も計測器の改良、増設や実験方法の工夫により、高エネルギー粒子の閉じ込めの性質を明らかにして、将来の核融合発電の実現につなげていきたいと考えています。


以上