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平成23年6月20日

熱・粒子輸送研究 -プラズマから熱や粒子が逃げるのを抑える-

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 平成22年度の大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で得られた成果を紹介しています。今回は、高温高密度の中心部(コア)のプラズマから熱や粒子が逃げるのを抑えてプラズマの性能を上げる、という課題に取り組んでいるコアプラズマの熱・粒子輸送研究を紹介します。

 プラズマ粒子であるイオンや電子には、磁力線と呼ばれる磁石から出ている目には見えない磁場の力の線に巻きつく性質があります。この性質を利用して、磁力線を幾重にも重ねて編んで作った「カゴ」の中にプラズマを閉じ込めます。核融合発電を実現するには、プラズマの中心部(コア)を1億度以上の超高温状態にしなければなりませんが、そのためには、磁力線の「カゴ」の中にできるだけ長くプラズマの熱と粒子を閉じ込めておく必要があります。核融合研究が始まった当初は、「カゴ」さえしっかり作ればプラズマの熱や粒子はなかなか逃げないと思われていました。しかし研究が進むにつれ、高温のプラズマ内には「揺らぎ(ゆらぎ)」とも呼べる渦のような振動が発生して、プラズマ中の熱や粒子が予想以上に早く逃げてしまうことがわかってきました。熱や粒子などがある場所からある場所に移ることを「輸送」といいますが、この予想以上に早く逃げてしまうことを「異常輸送」と呼んでいます。現在、LHDをはじめとする世界中の磁場閉じ込め核融合プラズマ装置では、どのような揺らぎがあるとどのような輸送が引き起こされるのか、を明らかにする研究が精力的に行われています。
 通常、熱は温度の高いところから低いところへ移ります。ところがLHDでは、温度の低いプラズマの周辺部を冷やすと、そこから遠く離れた温度の高いプラズマの中心部が暖まるという不思議な現象が見つかっています。この不思議な現象もプラズマ内に発生している揺らぎが原因と考えられていますが、具体的にどのような揺らぎが関係しているかは今まで解明されていませんでした。今回行われた実験と解析の結果、このような現象が発生しているとき、プラズマ電子の温度の揺らぎに、中心部と周辺部が相互に関係するようなプラズマの全領域にわたる大きな構造があることがわかりました。そして、この大きな構造を持つ電子の温度の揺らぎが、ある特定の狭い領域における電子の密度の揺らぎに影響を及ぼしていることもわかりました。今後はさらに解析を進めて、こうした揺らぎが輸送に与える影響を詳しく調べる予定です。また今回の実験では、この現象が電子だけではなく、イオンにも生じていることが確かめられました。このことは、この不思議な現象が、高温プラズマの世界では一般的な現象であることを示唆しています。
 プラズマ中のイオンや電子は、個々には様々な方向に動きますが、ある条件にすると自発的に、全体としてある一定の方向に「流れ」ることがあります。そして、この流れが輸送に影響を与えることが明らかになってきています。そのため、流れの性質、特にプラズマが自発的に流れ出す性質についての研究が精力的に進められています。LHDではドーナツ状にプラズマを閉じ込めていますが、今回の実験により、ドーナツに沿った方向のプラズマの流れが、温度の高いプラズマの中心部から温度の低い周辺部へ向かうイオンの温度の変化率にも依存していることが明らかになりました。こうしたプラズマの流れには、異常輸送の原因である揺らぎを抑制する効果があると、理論計算やコンピューターを使ったシミュレーションなどで予想されているため、盛んに研究が行われています。今後、こうした研究をさらに推し進めることで、流れ、揺らぎ、そして輸送の三者の関係を明らかにできると期待されています。


以上