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平成23年8月16日

プラズマの揺らぎを計測する

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 現在行われている大型ヘリカル装置(LHD)の実験・研究内容を随時紹介していきます。今回は、レーダーの原理を用いてプラズマ中の「揺らぎ」を測定する研究を紹介します。

 LHDでは数千万度以上の高温のプラズマの研究を行っていますが、この高温プラズマはいつも「揺れ」ています。大きな揺れもあれば小さな揺れもあり、早い揺れもあれば遅い揺れもあり、また、プラズマ性能の向上に結びつくような性質の良い揺れもあればプラズマ性能を劣化させる性質の悪い揺れもあります。プラズマが特定の方向に流れている時に、流れの一部分で揺れていることもあれば、単に振動しているだけの時もあります。核融合発電を実現するには高性能なプラズマを安定に閉じ込めることが必要で、そのためには、プラズマの中で生じているこれらの「揺れ」の性質を詳しく調べて、必要に応じてそうした「揺れ」を制御する必要があります。プラズマの「揺れ」を測定する方法の一つに、電子密度の揺らぎを計測するマイクロ波レーダーがあります。
 レーダーは、対象とするものに向けてマイクロ波などの電磁波を発信して、その反射波を測定することによって、対象までの距離や対象物の性質を調べる技術です。飛行機の運航や気象観測、さらには車の速度違反の取り締まりなど、日常的に使われていますが、プラズマの計測にも使われています。ある特定の波長のマイクロ波をプラズマ中に入射すると、プラズマ中の電子の集団の動きによって、入射した波長に対応する電子密度の位置にまるで鏡があるかのように、マイクロ波が反射してはね返されてしまいます。このマイクロ波がはね返ってくるまでの時間を測定すれば、反射位置すなわちプラズマ中の鏡面位置の情報が分かります。そして、この鏡面が揺れているならばレーダー信号も同じように揺れることになり、揺らぎに関する情報を得ることができます。入射するマイクロ波の波長を変えると、計測の対象となる鏡面位置を変えることができ、プラズマ中のどの場所で、どのような種類や大きさの揺らぎが生じているかを知ることができます。
 この方法を用いて、LHDではプラズマ中の様々な種類の密度揺らぎをこれまでに観測してきました。次のステップとして、「揺らぎ」の揺らぎという、ある位置における電子の「揺らぎ」の時間的な変動を観測することを目指しています。これにより、プラズマの背景流れと呼ばれる現象に関する情報を得ることができると期待されています。背景流れはプラズマ中の渦や乱流構造などと密接に関係して、プラズマの閉じ込め性能に大きく影響する重要な現象と考えられていますが、その計測例は世界的にほとんどありません。このことを含めて今年のLHD実験では、マイクロ波レーダー計測器の高性能化を図り、構造の小さい微視的な乱流から大規模なものまで幅広い領域の揺らぎを計測することを計画しています。そして、得られた成果を基に、LHDプラズマの閉じ込め性能の理解をさらに進めて、将来の核融合発電の実現につなげていきます。


以上