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平成23年8月29日

プラズマの温度分布を3Dで見る

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 現在行われている大型ヘリカル装置(LHD)の実験・研究内容を随時紹介しています。今回は、プラズマから放射されるマイクロ波を計測して、プラズマの温度分布を3D立体視する研究を紹介します。

 将来の核融合発電を目指して、LHDではプラズマの温度を如何にして上げるかという研究を行っています。そのためにはプラズマの温度を詳細に測ることが必要で、特にドーナツ型のプラズマの内部の温度分布を知ることはとても重要です。温度分布やその時間的変動がわかれば、プラズマ内部の熱の流れを知ることができるため、より効率的な加熱方法を工夫することができます。しかし、対象とするプラズマは、数千万度から1億度以上と高温なため、普通の温度計をプラズマに差し込むわけにはいきません。高温プラズマの温度を測る方法はいくつかありますが、その一つとして、プラズマが放出する電子サイクロトロン放射光の測定が挙げられます。
 プラズマはイオンと電子がバラバラになって、猛烈なスピードで動き回っている状態ですが、その「猛烈さ」が温度です。磁場に閉じ込められたプラズマでは、イオンや電子は磁力線に巻きついて回転しています。そのうち電子はこの回転によって電子サイクロトロン放射光という電磁波を放射し、その強度は、回転のスピード、すなわち電子温度と関係があります。そのため、電子サイクロトロン放射光を観測すると、プラズマ中の電子温度を知ることができます。
 電子サイクロトロン放射光はマイクロ波領域の電磁波で、数ミリ程度の様々な波長の光が含まれています。その波長は放射される場所の磁場強度に反比例するという性質を持っているので、波長を分離して測定すれば、電子サイクロトロン放射光が放射された場所を容易に特定することができます。サーモグラフィーでは、赤外線を用いて人体などの温度分布を画像として表示していますが、同様なことはマイクロ波を用いても可能です。そのために、電子サイクロトロン放射光のマイクロ波を受信するアンテナを工夫し、受光素子を複数用意して格子状に配置しました。そして、特定の波長を選んで測定すると、プラズマ断面内の測定波長に対応した磁場強度の等しい領域の温度分布を捉えることができます。さらには受信したマイクロ波に含まれる波長をそれぞれ分離して測定すると、異なる磁場強度の等しい領域の情報を同時に得ることができるので、3次元すなわち3Dの温度分布を知ることができます。このようにして、プラズマ内部の電子温度分布情報を画像として捉えられるように、計測器の改良を現在進めています。
 最近、プラズマ内部に発生する細かな渦や乱流がプラズマ全体の性能に影響することが指摘されていますが、このような複雑で細かな渦や乱流は3次元的であり、それらの計測とその可視化が課題となっています。今回紹介した3次元計測で乱流を捉えることができれば大きな成果となり、LHDプラズマの物理的な理解が進んで、核融合発電の実現に近づくことが期待されます。


以上