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平成24年3月26日

高エネルギー粒子の振る舞いを探る −高エネルギー粒子研究−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 平成23年度の大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で行われた研究内容を紹介しています。今回は、高温・高密度プラズマを生成する上で重要な役割を果たす高エネルギー粒子の振る舞いを調べる研究について紹介します。

 核融合発電を実現するためには、高温・高密度のプラズマを効率よく閉じ込めることが必要で、それを目指したプラズマ実験が、LHDをはじめとする磁場閉じ込め装置で行われています。現在、高温・高密度のプラズマの生成と加熱は、主として、高いエネルギーを持った高速の水素原子ビームをプラズマに入射させることによって行われています。入射された高速の原子ビームは、プラズマ中で高エネルギー粒子(イオン)となってドーナツ形状のプラズマ中をグルグルと周回します。この時、プラズマ中のイオンや電子と頻繁に衝突して、高エネルギーイオンの持つエネルギーがプラズマに与えられ、その結果、プラズマの温度が上昇します。そのため、この高エネルギーイオンが、何らかの原因により損失してしまうと、加熱効率が低下し、高性能プラズマの生成の妨げとなります。また、将来の核融合プラズマ発電では、核融合反応により発生した高エネルギーイオンがプラズマを加熱することにより、プラズマ燃焼が維持されるため、高エネルギーイオンの振る舞いを調べることは、核融合発電を実現する上で重要な課題です。
 LHD実験では主に、1)プラズマを閉じ込める磁力線のカゴの形状が高エネルギーイオンの振る舞いに与える影響の解明、及び、2)プラズマ中を周回する高エネルギーイオンが引き起こす不安定性により高エネルギーイオン自身が逃げてしまう現象の解明、に取り組んでいます。
 LHDでは、プラズマ中を周回する高エネルギーイオンがプラズマと相互作用した結果、ある条件で波(波動)が発生し、その波が不安定性を引き起こして、高エネルギーイオンがプラズマから逃げてしまう現象が観測されています。プラズマから損失する高エネルギーイオンを検出する測定器を用いて調べたところ、プラズマを閉じ込める磁場のカゴの形状を工夫することにより、発生する波による高エネルギーイオンの損失量を低減できることが分かりました。また、その時、波の振幅(強度)が大きくなっても、高エネルギーイオンの損失量があまり増えない事も分かりました。この実験結果は計算機シミュレーションにより、理論的にも再現することができ、実験で使われた磁場のカゴの形状は、高エネルギーイオンが引き起こす波の不安定性による高エネルギーイオン自身の損失に対して、堅固であることが明らかになりました。
 またLHDでは、高エネルギーイオンのプラズマ中での速度や位置の情報を得ることのできる高度な計測器の開発を進めています。本年度はさらに、高エネルギーイオンの動きの時間変化を精度良く計測できるよう改良を施し、観測可能な高エネルギーイオンの速度を、世界最高性能となる秒速4,500kmまで高めることに成功しました。これを用いて、高エネルギーイオンがプラズマを加熱することにより、自らが減速する過程について詳細に調べました。その結果、プラズマの閉じ込めが良い磁場のカゴの形状では、観測された高エネルギーイオンの減速時間は、プラズマの温度や密度で理論的に決まる減速時間と良い一致を示しました。このことは、LHDの閉じ込めの良い磁場条件では、高エネルギーイオンの振る舞いを理論的に説明することができ、将来の核融合発電プラズマへの予測精度が高まったことを意味しています。今後、こうした研究成果をさらに発展させる計画です。


以上