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平成24年5月7日

壁への熱負荷を減らす −周辺プラズマの制御−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

  大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で行われた研究内容を紹介しています。今回は、将来の核融合発電所を設計する上で最重要課題の一つである装置の壁への熱負荷について、その原因の究明と低減に向けた対策に関する研究を紹介します。

 将来の核融合発電所では、中心部のプラズマの温度は1億度を超えていますが、その熱が直接装置の壁に伝わらないように、約100万度という温度の低いプラズマでできた、厚さ数センチほどの薄皮でその周りを覆っています。この薄皮のことを「スクレープオフ層」と呼びますが、さらにこの薄皮も装置の壁に触れないように、磁力線を使ってプラズマ全体を宙に浮かせています。これはプラズマが磁力線を横切って動きにくいという性質を利用していますが、その一方、プラズマは磁力線に沿っては動きやすいため、磁力線の形状を工夫することにより、周辺部のプラズマを制御することができます。
 実際のプラズマは完全に宙に浮いているわけではなく、安定にプラズマを保持するため、周辺部の磁力線の形状を工夫して、壁から離れたプラズマを支える“支柱”のような磁力線を装置の特定の場所から伸ばしています。そのため、この“支柱”に沿ってプラズマが漏れ出てきますが、このプラズマが終端する場所を「ダイバータ」と呼びます。そして、そこに設置した受熱板(ダイバータ板)には、プラズマからの熱が集中することになるため、ダイバータ板を溶かさないよう、過大な熱負荷を抑える必要があります。
 熱負荷を下げる方法に、プラズマの熱を光に変えて四方八方に散らす「放射損失」と呼ばれる方法があります。熱が光に変わって広い領域に分散するため、ダイバータ板への入熱が減少するのです。放射損失は周辺部のプラズマ中に微量の不純物を入れることで起こりやすくなります。そして、放射損失により周辺のプラズマの温度が下がり、温度が下がるとさらに放射損失が起こりやすくなり、その効果はどんどん促進されていきます。
 ここで注意すべきことは、宙に浮いたプラズマは磁力線の“支柱”によって支えられている、つまり、プラズマがダイバータ部で終端しているということです。あまりに放射損失が大きくなってプラズマがダイバータ部まで届かなくなると、プラズマは実質的に支えを失うことになります。この時、放射損失が起こって強く光っている領域が不安定になり、フラフラと動き出します。場合によっては、放射損失の領域が中心部まで侵入して、プラズマが消えてしまうこともあります。
 このような不安定性を抑えるために、磁力線の形を工夫して制御する試みを行っています。それはスクレープオフ層にX点と呼ぶ磁力線の“結び目”のようなものを作り、ここに放射損失の領域を固定しようという方法です。このX点は不思議な点で、磁力線に沿って流れ出るプラズマの熱はX点になかなか届かず、その結果、X点にたどり着くまでにプラズマは冷えやすくなります。放射損失は冷えたプラズマを好みますので、X点周辺にとどまりやすいと考えられます。これまでの実験により、おおよそ予想したようなプラズマの振る舞いを確認し、核融合発電所設計の課題解決に向けて前進しました。一方、プラズマは非常に複雑な性質を持っているため、熱負荷低減の課題を解決するためには、さらに詳細な計測と解析を続けていく必要があります。


以上