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平成24年6月4日

高密度プラズマの電子を加熱する −プラズマ中での波動モード変換加熱−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 大型ヘリカル装置(LHD)では、磁場に閉じ込められたプラズマを加熱して、高温・高密度のプラズマを実現しています。今回は、こうしたプラズマ加熱法の一つである電磁波などの波動を用いた電子加熱のうち、プラズマ中で波動モードを変換することにより、高密度のプラズマでも電子を加熱することのできる方法についての研究を紹介します。

 プラズマ中の電子やイオンは磁力線の周りを回転運動するため、その回転運動の振動数に相当する周波数の電磁波をプラズマに入射すると、回転運動が増幅してプラズマが加熱されます。これはブランコに乗っている人に対して、その揺れに合わせて背中を押すのを繰り返すと、揺れが大きくなることと同じです。LHDでは、電子の回転運動に相当する周波数である77ギガヘルツ(770億ヘルツ)の電磁波を用いて電子を加熱していますが、これにより、密度は低いものの2億3千万度の電子温度を達成しています。
 しかし、プラズマの密度が高くなってある値以上になると、電磁波はそれより高い密度のプラズマの中に入ることができず、反射されてしまいます。この密度を遮断密度といいます。そのため、通常の電磁波を用いた方法では、遮断密度よりも高い密度領域のプラズマを加熱することはできません。それに対して、遮断密度が無く、どんなに高い密度のプラズマ中でも進んでいける電子バーンシュタイン波と呼ばれる波動があります。電磁波は波動の進行方向とほぼ垂直に電場が振動する「横波」であるのに対して、電子バーンシュタイン波は波動の進行方向と電場の振動方向が平行な「縦波」であるなど、それらの性質は全く異なるのですが、ある種の電磁波は、プラズマ中のある領域でその波動の性質を電子バーンシュタイン波へ変換することができます。これを波動のモード変換といいます。それを利用すれば、高密度プラズマでも電子バーンシュタイン波によりプラズマを加熱できることになります。
 磁場強度の強い側から特定の電磁波をプラズマへ入射させると、電子バーンシュタイン波へのモード変換が可能となりますが、通常は磁場を作るコイルとコイルの間の磁場強度の弱い所を通して電磁波を入射させています。そこでLHDでは、ヘリカルコイルに近い磁場の強い場所に電磁波を反射するミラーを設置し、そのミラーで反射された電磁波が磁場の強い側からプラズマ中へ入射するようにしました。昨年度の実験では、そのミラーを使って電磁波を強磁場側から入射させることにより、通常の電磁波では入っていけない非常に高密度のプラズマ中心の領域において、電子温度の上昇を観測しました。これは、波動のモード変換で生じた電子バーンシュタイン波により、高密度のプラズマ中心部で電子を加熱できたことを示していると考えられます。
 本年度の実験では、こうした波動のモード変換による加熱機構をさらに詳しく調べて、将来の核融合発電所における高密度運転時のプラズマ加熱手法の確立に向けた研究を進める予定です。


以上