<E-Mailによる情報 No178>
核融合科学研究所 >> 一般の方へ >> 研究活動状況 >> プラズマ安定性の自己回復をコンピュータシミュレーションで解明する  

平成24年6月18日

プラズマ安定性の自己回復をコンピュータシミュレーションで解明する

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 将来の核融合発電所の経済性を高めるためには、より高い圧力のプラズマを安定に閉じ込めることが必要です。大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験でも、こうした圧力の高いプラズマの安定性に関する研究が進められており、理論予測を超えた高性能な結果が得られています。今回は、その理由を解明するために進められているコンピュータシミュレーションによる研究について紹介します。

 テレビやラジオの天気予報では、「今日は大気の状態が不安定で...」という言葉をよく耳にします。同じように、高温プラズマの状態も「安定」であったり「不安定」であったりします。一般に、プラズマが全体的に不安定な状態になると、せっかく加熱した中心部の温度の高いプラズマが周辺部へ逃げていって急速に冷やされてしまいます。
 プラズマが不安定になるかどうか(これを安定性といいます)は、プラズマを閉じ込めている「磁場のかご」の形や性質、つまり構造に大きく依存します。LHDでは、超伝導コイルの作り出す磁場の組み合わせにより、多彩な構造の磁場のかごを作り出すことができ、それらの磁場構造がプラズマの安定性にどのように影響するかを実験的に研究しています。また、そのときのプラズマの状態を、コンピュータシミュレーションにより詳細に解析しています。
 プラズマを閉じ込める磁場の強さに対して、より高温高密度の高い圧力を持ったプラズマを閉じ込めることができると、それだけ超伝導コイルを小さくすることができるため、装置が小さくなります。その結果、全体のコストが抑えられることから、より経済的な核融合発電所を実現できます。ところが、プラズマの温度や密度が上がってプラズマ全体の圧力が高くなると、中心部の圧力と周辺部の圧力の差が大きくなってきます。一般に、この圧力差はプラズマを不安定にしようとする傾向があり、LHDの設計段階での理論計算では、LHDの実験で現在標準的に用いられているいくつかの磁場構造の中には、低い圧力でもすぐに不安定になることが予測されるものがありました。ところが、実際の実験では、磁場構造を少しずつ調整することにより、この磁場構造でもプラズマを安定に保つことができ、将来の経済的な発電の目安となる高いプラズマ圧力を達成することに成功しました。
 理論予測が結果として望ましい方向ではずれたわけですが、なぜ、この磁場構造で高い圧力を持つプラズマが安定に存在できたのかを解明する必要があります。そのために、プラズマの安定性をスーパーコンピュータを使ったシミュレーションで調べました。詳細な長時間にわたる計算の結果、LHDでは、プラズマが自分自身で安定性を回復しているという興味深い様子が示されました。プラズマは圧力差によって実際に不安定になるのですが、ほんの少し不安定になったところで、圧力差を小さくするようにプラズマが自ら少し移動して、新たに安定な圧力の状態を作り出すことがわかりました。つまり、圧力が上がるにつれて、その時々の圧力の状態に応じてプラズマが自ら少しずつ変化し、その結果、高い圧力まで安定にプラズマが存在できたと考えられます。
 このようなプラズマの安定性の自己回復に関して、さらに包括的な理解を得るために、今後もコンピュータシミュレーションによる研究を続けていきます。


以上