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平成24年7月30日

プラズマの不安定性の大きな構造を見る −大域的不安定性の画像計測−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 核融合発電を実現するためにはプラズマを高い温度、高い密度に保つ必要があります。しかし、温度や密度が上昇してプラズマの圧力が高くなると、プラズマを閉じ込めている磁場の弱いところからプラズマが逃げるようになるため、プラズマは不安定になります。このような現象は、プラズマ全体にわたるような大きな構造を形成することを特徴としているため、大域的不安定性と呼ばれていますが、プラズマの閉じ込め特性を向上させるためには避けなければなりません。今回は、このような大域的不安定性に対して、大型ヘリカル装置(LHD)で行われている画像計測の技法を用いた研究について紹介します。

 プラズマの大域的不安定性について、少し似た身近な現象として、台風を例に考えてみましょう。気象予報のなかった昔の人たちにとって、台風というのは1〜2日で急速に風雨が強まったり弱まったりする不思議な現象だったことでしょう。広域情報のなかった当時は、ある一か所で風の方位や風の強さの変化を記録したとしても、なかなか台風の全貌をとらえることができなかったはずです。何ヶ所かの広い範囲にわたる観測結果をつき合わせてみて初めて、大きな渦が日本を通り過ぎたことが理解でき、台風の通った経路を推定することができます。さらに、気象衛星からの画像情報があると、どのように台風の渦ができてどのように進んできたかが、一目瞭然にわかります。
 プラズマの大域的不安定性の計測についても同様のことが言えます。LHDには、ある特定の場所や狭い領域での温度や密度などのプラズマの性質やプラズマから放出される光や波などを測定する高性能な計測器がいろいろありますし、不安定性や揺らぎなどのプラズマの速い動きに対応できるような高速の計測器も何種類もあります。しかし、それらは台風の情報を一か所で記録するようなもので、広い範囲の全体を見渡すことは簡単ではありません。そこでLHDでは、画像計測を用いて、プラズマ全体を鳥瞰できるように画像を解析する手法を開発しました。これにより、プラズマ中のどこに、どのような空間構造をもった不安定性が成長しているのかを直感的に調べることができます。
 台風を気象衛星から観測するときも、目に見える可視光だけではなく、赤外線光なども使いますが、プラズマの画像解析でも様々な波長の光を使います。紫外線よりも短い波長の軟X線と呼ばれる光を使うと、光のエネルギーが高いので、プラズマ中心部の温度の高い領域が観測できますし、可視光のように低いエネルギーの光を使うと、プラズマ周辺部より外側の温度の低い領域の情報が得られます。LHDでは最近、軟X線と可視光の中間のエネルギーの光であるVUV(真空紫外)と呼ばれる光を観測する高速度VUVカメラという計測器を開発しました。このカメラを使うと、軟X線と可視光の中間のエネルギー領域の画像を高速で測定することができるため、プラズマ中心部よりはやや温度の低いプラズマ周辺部の性質や不安定性を測定することができます。
 LHDの周辺部の磁場構造は、大域的不安定性が成長しやすいという特徴を持っているため、プラズマの性能をさらに向上させるためには、この不安定性の詳しい研究が必要です。新しい高速度VUVカメラは、こうした研究の強力な武器になることから、従来からの画像計測装置も活用して、この大域的不安定性がプラズマ閉じ込め特性に与える影響についての解明が期待されています。


以上