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平成24年8月27日

高温超伝導導体の開発研究 −ヘリカル型核融合発電所への適用をめざして−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 大型ヘリカル装置(LHD)で得られたプラズマ閉じ込め実験の成果を受けて、将来のヘリカル型核融合発電所の概念設計とそれに関連した要素技術開発を現在行っています。今回は、ヘリカル型核融合発電所の超伝導コイルへの適用を目指した高温超伝導導体の開発研究について報告します。

 現在設計を進めている核融合発電所(原型炉)はFFHR-d1と名付けられており、その大きさはLHDのちょうど4倍になります。高温プラズマを閉じ込めるために用いるコイル(電磁石)は、LHDのドーナツ形状のコイルをそのまま大きくした相似形となるように設計しています。このため、らせん状にねじれたヘリカルコイルは、ドーナツの直径が31.2mと巨大な超伝導コイルとなります。また、その巻線には、コイルが作る最大で13テスラ(1テスラは地磁気の約2万倍の強さ)にもおよぶ強力な磁場がかかった状態で、10万アンペアの電流を流す「超伝導導体」が必要となります。「超伝導」とは、ある特殊な物質を低温に冷やすと電気抵抗がゼロになる現象で、今から百年前の1911年に発見されました。電気抵抗がないと大きな電流を流しても発熱しないため、超伝導物質を用いて作った線材を多数本束ねた導体を電磁石の巻線に用いると、強力な磁場を発生させることができます。
 FFHR-d1の巨大なコイルに最適な超伝導線材を選定することは、重要な工学設計課題であり、その候補のひとつとして考えられるのが銅酸化物系高温超伝導線材です。これに使われているのは陶器などと同じセラミック状の物質で、1986年に超伝導になることが発見されました。この超伝導線材は、現在LHDなどで用いられている金属系超伝導線材がマイナス269度の液体ヘリウムによる冷却で使われるのに対して、マイナス196度の液体窒素温度でも超伝導になるため、「高温超伝導」と呼ばれています。高温超伝導は、発見から四半世紀を経た現在、実用線材が製造されるようになり、送電ケーブルや変圧器、モーターなどの電力機器への応用が可能な段階にきています。
 高温超伝導線材のうち、大規模なコイル用導体として用いるのに有望なのが「イットリウム系線材」です。これは、強い磁場がかかった状態でも極めて大きな電流を流せるという特性があるとともに、機械的に強固な導体を構成できる可能性があります。ただし、現状ではこのタイプの線材を用いた大型コイル用大電流導体の実績がほとんどありません。核融合科学研究所では、世界に先駆けて、2005年より1万アンペア級のイットリウム系大電流高温超伝導導体の開発を始めました。そして、2012年現在、5万アンペア級の大型導体の通電試験に成功するところまで研究が進展しています。
 核融合発電所のコイルに用いるためには、超伝導導体の接続方法も重要な開発課題です。導体試験では、2本の導体をつなぎ合わせた接続部の試験も行っています。これは、東北大学との共同研究によって開発を進めているものです。一連の試験において接続部の電気抵抗が十分に低いことが実証されれば、多数の短い導体を接続しながら巨大なヘリカルコイルを迅速に製作することも可能になると期待されます。
 このようにして、将来のヘリカル型核融合発電所の超伝導コイルへの適用をめざした高温超伝導導体の開発研究を進めています。


以上