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平成24年9月10日

水素の氷粒が溶ける様子を観測する −ペレットの高速イメージング計測−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 将来の核融合発電では、中心部で1億度を超えるプラズマを長い間維持するために、プラズマの基となる水素粒子を燃料として、外部から継続的に供給する必要があります。その有効な供給法のひとつに固体水素ペレット入射法があります。今回は、大型ヘリカル装置(LHD)で行われている水素の氷粒(ペレット)を用いた水素粒子供給とペレットのプラズマ中での振る舞いの観測に関する研究を紹介します。

 一般的に、ペレットは『小さな粒』という意味で用いられますが、その意味の通り、水素を摂氏マイナス263度まで冷やして直径数ミリメートルの氷粒のペレットを作り、それを音速よりも速い高速度でプラズマに入射するのが、ペレットによる粒子供給です。入射したペレットは、数千万度を超える高温のプラズマによって、あっという間の1000分の1秒程度で溶けて水素ガスになり、プラズマの粒子となります。氷粒のペレットは溶けてその身を削りつつも、プラズマ中を高速で飛んでゆくので、プラズマの中心部まで効率よく水素粒子を供給することができます。
 ペレットがプラズマ中でどのように溶け、どのようにプラズマに吸収されるのか(これを溶発といいます)を知ることは、粒子供給法を確立するために重要です。溶発の過程を明らかにすることにより、将来の核融合発電所で想定している高い温度のプラズマに入射したペレットが溶ける様子を精確に予測することができるからです。固体のペレットは粒子密度が高いため、溶発する際、ペレットの周りに温度の低い高密度のプラズマの塊(これをプラズモイドといいます)を形成します。プラズモイドは散逸して、最終的には周囲のプラズマに吸収されますが、プラズマと相互作用して複雑に振る舞います。こうした複雑なプラズモイドの挙動を理解し、さらには精確に予測することができれば、将来の核融合発電所における燃焼制御性や粒子供給効率を向上させることができます。
 プラズモイドは、周囲の高温プラズマよりも数百倍強い光を放っています。LHDでは、この発光からプラズモイドの電子温度や電子密度などの内部情報を得るために、イメージファイバと高速度カメラを用いたイメージング計測手法を独自に開発しました。イメージファイバは胃カメラなどの医療用内視鏡等にも用いられており、2次元の画像を観測できます。また、高速度カメラは毎秒最大10万枚もの画像を得ることでき、1000分の1秒以下の溶発過程を詳細に調べることができます。一般的なデジタルカメラの動画で得られる画像がせいぜい毎秒数10枚であるのに比べると、如何に高速であるかがおわかりかと思います。イメージファイバにはそれぞれ、ある波長の光だけを透過するフィルタを取り付けて、いわば、数種類の色つきメガネでプラズモイドを観測します。そして、その見え方を比較することにより、プラズモイドの内部情報を得ることができます。
 こうした高速イメージング計測の結果、プラズモイド内部の電子密度は、周囲のプラズマの密度よりも5000倍ほど高い状態になっていることが分かりました。さらに、そのプラズモイドの複雑な動きも観測できました。今後は、様々なプラズマ条件で入射されたペレットのプラズモイドの内部分布を調べ、ペレット溶発の素過程を理解して、水素粒子供給法の確立を目指します。


以上