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平成25年4月30日

プラズマの間欠的な現象を探る −HYPER-Iを用いた基礎プラズマ研究−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 核融合科学研究所では、将来の核融合エネルギーの実現を目指して、大型ヘリカル装置(LHD)による高温プラズマの研究を進めていますが、複雑なプラズマの振る舞いを学術的に解明するために、小型装置を用いた基礎的な実験も行われています。直線型高密度プラズマ発生装置HYPER-I(ハイパーワン)もその一つで、全国の大学の先生や大学院生が研究所にやってきて、プラズマの基礎的な性質を調べる共同研究を実施しています。そして、その結果はLHDの研究にも生かされています。今回は、HYPER-Iで最近見つかった、プラズマ中の電子の温度が突発的に変化するという現象について紹介します。

 HYPER-Iは、磁力線のカゴの形がLHDのようにドーナツ状ではなく、直線状で端があるため、高温のプラズマを閉じ込めることはできません。家庭用電子レンジと同じマイクロ波を用いて生成されたプラズマの電子温度は10万度程度とLHDに比べて低温ですが、LHDの周辺プラズマに匹敵する比較的高い密度のプラズマを、直径30cm、長さ2m程度の空間に定常的に生成することができます。そのため、核融合プラズマや宇宙プラズマをはじめ、分光研究や光源研究なども含めた様々な基礎的な実験に使うことができます。
 さて、突発的な現象がある時間周期で繰り返すことを「間欠的」といいます。例えば、ある時間間隔で水蒸気や熱湯を噴出する温泉のことを「間欠泉」と呼びますが、この時、噴出する周期は一定ではないため、次にいつ噴き出るかを正確に予測することはできません。同様な間欠的な現象が、九州大学・名古屋大学との共同研究により、HYPER-Iのプラズマ中で発見されました。マイクロ波により定常的に生成されているプラズマ中の電子の温度が突然高くなったかと思うと、その約10万分の1秒後には元の温度に戻るという現象が、間欠的に繰り返されたのです。
 そこで、HYPER-Iのプラズマ中に、プローブと呼ばれる測定器を入れてプラズマからの電気信号を計測すると、同様に間欠的な変化が検出されました。そして、この一見規則性のないランダムな信号のもつ性質を調べるために、統計的な手法を用いて、一度突発的な現象が起こった後、どのくらいの時間が経ってから次の現象が起こるか、という時間間隔を調べました。20秒間のプラズマ生成中に10万回程度起こるこの現象を統計的に調べた結果、時間間隔が長くなればなるほど、それが起こる頻度が急激に減少するということがわかりました。また、その減少の割合が、数学でいうところの「指数関数的な減少」と驚くほどきれいに一致していました。全く規則性がなく乱雑に見えた現象の背後に、このようなきれいな数学的構造が隠れていたのです。
 このようなHYPER-Iで発見された発生間隔をもつ現象は、LHDのようなドーナツ形状のプラズマ閉じ込め装置でも、磁力線のカゴの外側へ間欠的に粒子が飛び出す現象として観測されています。温度や密度がかなり異なるプラズマの間にある共通の性質を示唆しているのかもしれません。今後も、国内外の大学との共同研究を通じて、この現象の解明を目指した研究を進めていきます。


以上