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平成25年6月6日
イオン温度・電子温度がさらに増加 −高温度プラズマの領域拡大−
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所

 将来の核融合発電を実現するためには、その基礎研究として、1億2千万度以上の温度のプラズマを実現し、その高温度プラズマの性質を学術的に調べる必要があります。そのため、大型ヘリカル装置(LHD)では、「いかにして高い温度のプラズマを実現するか」を重要な研究項目の一つに掲げています。今回は、昨年度の実験で得られた高温度プラズマの性能向上について報告します。

 プラズマは、原子から電子が離れて(電離して)、イオン(原子核)と電子がバラバラになって存在する電離ガスで、温度の高い状態です。蛍光灯の中もプラズマ状態で、その温度は1万度ですが、大気の1,000分の4程度の低い密度なため、ガラス管の壁で冷やされて1万度程度にしかなりません。一方、LHDは、超伝導磁石により、真空容器の壁に触らないようプラズマを宙に浮かして保持しています。それにより、プラズマは壁で冷やされないため、密度は蛍光灯プラズマの5,000分の1程度ですが、数千万度を超える温度を実現しています。
 プラズマの温度を上げるためには、プラズマを加熱しなければなりません。LHDでは、イオンの温度を上げるため、プラズマにエネルギーの高い水素の粒子ビームを打ち込み、そのエネルギーによりプラズマを加熱しています。5台の粒子ビーム入射装置により、平成23年度には8,000万度のイオン温度を達成しました。昨年度の実験では、高イオン温度プラズマの生成に先立って、FMラジオの周波数帯の電波を用いてプラズマの生成を繰り返すことにより、真空容器の壁を高イオン温度プラズマの生成に適した条件にすることに成功しました。プラズマは壁に直接触っていませんが、壁の影響を受けるため、壁条件を調整する手法を確立することは重要です。この最適化により、昨年度は8,500万度のイオン温度を達成することができました。
 一方、電子の温度を上げるために、周波数の高いマイクロ波を用いてプラズマを加熱しています。昨年度は、筑波大学と共同で開発したマイクロ波発生装置ジャイロトロンを新たに1台導入しました。このジャイロトロンの周波数は これまでより高い154ギガヘルツ(1,540億ヘルツ)、発振電力は1,000キロワットで、平成23年度までに開発・導入してきた3台のジャイロトロンと合わせて、マイクロ波による加熱電力は、2秒以下の短時間ですが、合計4,600キロワットになりました。これを用いた大電力プラズマ加熱実験により、1cc当たり10兆個の密度(大気の270万分の1程度)のプラズマにおいて、1億5000万度の電子温度を実現し、平成23年度までに同じ密度で得られていた1億度を大きく更新しました。
 これまでに達成した高イオン温度あるいは高電子温度のプラズマは、それぞれ別の実験条件で得られているため、その時の電子温度あるいはイオン温度は高くはありません。将来の核融合発電所では、プラズマ中のイオンと電子は同じ高い温度になっている必要があります。今後はそうした条件が調べられるよう、イオン温度のさらなる向上を目指した研究と並行して、温度は低くてもイオン温度と電子温度が両立したプラズマを実現させる研究を進めていきます。

以上