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平成25年8月5日
未来志向の核融合発電所の設計研究 −電力と水素燃料の同時製造−
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合科学研究所では、国内外の研究者と共同して、ヘリカル型による核融合発電炉(FFHR)の設計を進めています。大型ヘリカル装置(LHD)による研究で明らかにされたプラズマの性質と法則に基づいて核融合炉心プラズマの性能を予測して設計を進めていますが、設計の進展により新たなデータが必要になると、それに対応したLHDの実験を行うなど、設計研究の高度化も図っています。また、将来の核融合発電が実現する時代におけるエネルギー資源とその利用環境を考慮して、どのような機能が核融合発電所に求められるかという観点からもFFHRの設計は検討されています。今回は、こうした核融合発電所に対する未来志向の設計研究について紹介します。

 石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は、火力発電所で電気エネルギーに変換されて、送電線を通して工場や家庭等に供給されるだけではなく、ガソリンや都市ガスなどとして、直接、自動車の動力あるいは台所や風呂の燃料などのエネルギーとして使用されます。現在の日本のエネルギー消費量の約75%は、こうした運輸や産業、燃料などで占められており、その大部分が化石燃料でまかなわれています。将来、化石燃料の資源が枯渇することが予測されるため、こうしたエネルギーを水素を利用してまかなうことが検討されています。中部国際空港では、水素を燃料とする燃料電池バスが公道走行の実証段階にあり、北九州市の八幡地区の水素タウンでは、水素ガス用配管が公道に埋設されて100 キロワットの燃料電池用に供給されています。
 FFHRでは、こうした将来のニーズを考慮し、また発電所の運転の自由度を確保するために、未来志向の設計研究として、電力と水素燃料を同時製造する核融合発電所の検討を行っています。電気の消費の多い昼間は、発電した電気をすべて送電線に供給し、電気の消費の少ない夜間は、余剰の電気で水または水蒸気を電気分解して水素燃料を製造し蓄積します。そして、核融合発電所の設備の中に水素燃焼型のタービン発電機を併用することにより、安定でかつ良質の電気を送電することができるとともに、核融合発電所の設備の起動あるいは万一の震災時の電源の確保などにも水素燃料は利用できます。こうした点が、電力と水素燃料を同時製造する未来志向の核融合発電所の利点です。
 電力と水素燃料を同時製造する核融合発電所では、発電用の蒸気タービン等からでる廃熱を利用して、海水の中に含まれる金属資源(リチウム、ニッケル、チタンなど)を高効率に抽出することも検討されています。こうした金属資源のうちリチウムは、現在、中南米の塩湖で、塩水を蒸発させたかん水から塩化物を取り除き、化学的な方法を用いて製造するプラントが稼動しています。そこで、日射による塩水の濃縮の代わりに、廃熱を利用して塩水の濃縮・蒸発を行うことを検討しています。リチウムは核融合炉における冷却材として欠くことのできない材料です。電力と水素燃料の製造に付随してリチウムを製造し、さらに、水素燃料の中に含まれる重水素を分離できれば、核融合に使われる原料を自活できる可能性があります。これらの長所を十分に生かして、今後も、二酸化炭素を排出しないクリーンな未来志向の核融合発電所の設計を進めていきます。

以上