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平成25年10月15日
核融合炉における超伝導コイル電源の設計 −ゆっくり流せば小さくなる−
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合科学研究所では、核融合エネルギーの実現を目指して、大型ヘリカル装置(LHD)による高温プラズマの実験研究を行うとともに、得られた成果を基に、将来のヘリカル型核融合炉の概念設計も進めています。その際、装置構成や運転方法など、実際に発電する核融合炉は、実験装置であるLHDとは異なる点があるため、現状の機器をそのまま拡張して設計できるとは限りません。プラズマを閉じ込める磁場を発生させる超伝導電磁石(コイル)に電流を流す電源もその1つです。今回は、核融合炉で使用する超伝導コイル用電源の設計研究の1例について紹介します。

 高温のプラズマを閉じ込めるため、プラズマの周辺に置いた超伝導コイルに大きな電流を流して強力な磁場を発生させますが、LHDと核融合炉では、コイルに電流を流す方法が異なります。LHDは6組の超伝導コイルを使って磁場を発生させていますが、それぞれのコイルに1台ずつの電源をつないで、流す電流を個別に調節することにより、プラズマを閉じ込める磁場の「カゴ」の形をいろいろと変えることができます。これにより、「実験装置」であるLHDでは、様々な形状の磁場のカゴの条件でプラズマの性能を調べる実験を行うことができ、その結果を基に、将来の核融合炉の設計を最適化することができるのです。
 このようにして設計された核融合炉では、高温プラズマの閉じ込めに対して最適化された磁場条件やコイル配置となっているため、LHDのように個々のコイルの電流を個別に調節する必要はなく、一括して調整することになります。そのため、コイルの数だけ電源を用意しなくても、超伝導コイルを上手に組み合わせた設計をして一筆書きにつなぐことができれば、たった1台の電源で全部のコイルを一度に運転できることになります。
 一方、超伝導コイルは電気抵抗がないので、少しずつ電流を増やしてゆっくりと大きな電流まで立ち上げます。LHDでは30分ほどかけて電流を立ち上げてから、その日の実験を行いますが、発電する核融合炉では、1年以上の長期間にわたる連続運転になるため、超伝導コイルに流す電流も一晩くらいかけてゆっくり立ち上げても差し支えありません。電流を立ち上げる時間を長くすれば、必要な電源の大きさを小さくすることができます。
 将来のヘリカル型核融合炉は、大きさがLHDの3倍程度となり、超伝導コイルに与えるエネルギーはLHDの100倍以上になります。そのため、単純にLHDの電源をスケールアップすると実現困難な大きさになってしまいます。そこで、ヘリカル型核融合炉では、1つの電源でゆっくりと電流を立ち上げるという設計指針をコイル電源に適用したところ、必要な電源の大きさはLHDの電源の4倍程度となり、十分実用的な大きさに収めることができました。
 今後は、このような核融合炉における超伝導コイル電源の検討をさらに進めるとともに、核融合炉から出てくる熱を電力に変換する発電部分の検討など、発電プラントとしてのヘリカル型核融合炉の設計研究を進めていく予定です。

 

以上