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平成25年10月28日
磁力線のカゴのほころびを見る -熱の伝搬実験-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)では、超伝導コイルの作る磁力線の「カゴ(籠)」により高温高密度のプラズマを閉じ込めています。この磁力線のカゴは層状で幾重にも入れ子状になっているため、プラズマを宙に浮かして装置の壁に当たらないようにしているだけでなく、中心部のプラズマを高い温度に保持する役割を担っています。そして、この磁力線のカゴの形は、プラズマの状態により変化して、場合によってはプラズマの性能を大きく左右してしまいます。今回は、プラズマの閉じ込めに大きな影響を与える磁力線のカゴについて、その形の変化を調べる研究を紹介します。

 将来の核融合発電の実現を目指して高温高密度のプラズマの研究を進めていますが、そのようなプラズマを閉じ込めるために、磁力線のカゴが使われています。この磁力線のカゴは端のないドーナツ型ですが、プラズマを閉じ込めるためにはさらに磁力線がねじれていることが必要です。そうすることで磁力線のカゴは、中心部から外側まで無数の層が入れ子状に重なった状態になります。プラズマはある層から隣の層へ自由には行き来できないので、この磁力線の多層構造によりプラズマを閉じ込めることができるのです。また、中心部から外側に向かって、層ごとにねじれの角度が変化していきますが、隣り合わせの層の磁力線のねじれの角度が近いと、互いの層の磁力線がつながりやすくなり、その結果、層構造を形成できず、磁力線のカゴはほどけて乱れてしまいます。そのため、ねじれの角度の変化が大きい方が、磁力線のカゴとしては強いことになります。
 さて、磁力線のカゴは、LHDの超伝導磁石に電流を流すことにより作ります。ところが、プラズマはイオンと電子という電気を持った粒子で構成されているため、これらの粒子が動き回るとプラズマ中に電流が流れて、それによる磁場が発生します。そして、磁力線のカゴにこのプラズマが作る磁場が重なることで、カゴの形が変化してしまいます。変化の仕方は様々で、カゴの端がほころんできたり、層と層の間に木目のような模様ができたりします。このような変化は多くの場合、プラズマの閉じ込めに悪い影響を及ぼします。
 そこで、中心部の領域で磁力線のカゴがほどける様子を実験的に観測することを試みました。もちろん、プラズマ中の磁力線のカゴの形を直接見ることはできないので、プラズマの中心部だけを短い時間間隔で周期的に加熱して、その振動する熱が外側に伝わっていく様子を観測しました。熱の伝わる速さが異常に速い場合は、プラズマを十分閉じ込めることができないので、磁力線のカゴは層構造を形成していない状態と考えられます。この方法で調べたところ、プラズマ中のある方向に電流が流れるようなプラズマ条件の時、温度が上がらない領域が現れ、そこで磁力線のカゴがほどけていることを示唆する結果が得られました。
 中心部を加熱しているにも関わらず、プラズマの中心部の温度が上がらないことがあります。そのような場合、磁力線のカゴがほどけている領域があることが考えられます。それを引き起こすプラズマ条件をしっかり調べて対策することで、将来の核融合発電に必要な高温高密度プラズマの生成方法の確立を目指しています。

以上