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平成25年11月11日
赤外線ピンホールカメラでプラズマを見る -3次元輻射計測法の開発-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合発電を実現するためには、中心部で1億2千万度を超える高温のプラズマを閉じ込める必要がありますが、一方、閉じ込めている領域の外側では、周辺部に出てきたプラズマの温度を十分に下げて、あらかじめ決められた場所にプラズマを終端させています。この時、周辺部のプラズマは熱を放射(輻射)して温度を下げるので、その振る舞いを調べるためには、熱の放射状態を詳細に計測することが必要です。今回は、大型ヘリカル装置(LHD)において、周辺プラズマからの熱放射状態を調べるために開発が進められている、先進的な3次元輻射計測法について紹介します。

 高温のプラズマは磁力線のカゴに閉じ込められて宙に浮いていますが、カゴから漏れ出てきたプラズマは、カゴの一番外側から引き出された磁力線に沿って周辺部を流れ、あらかじめ決められたダイバータと呼ばれる場所に導かれます。そのため、ダイバータにはプラズマの持っている熱が集中することになり、場合によってはダイバータが損傷してしまいます。このダイバータの熱負荷を抑えるため、プラズマが周辺部を流れているときに、その持っている熱を放射させて失わせるよう「輻射(ふくしゃ)損失」を増やす方法があります。輻射という言葉は放射と同意語ですが、赤外線ストーブなどで使われているのを耳にしたことがあるかと思います。輻射によって熱を損失させると、ストーブによる暖房のように、熱が四方八方へと広がるため、ダイバータへの熱の集中を分散させることができます。
 プラズマの輻射損失を増やすために、通常はダイバータ周辺部に少量の不純物ガスを入れます。ただし、輻射損失を増やし過ぎると中心部のプラズマが不安定になるため、輻射損失量を制御しなければなりません(詳しくは2012.5.7付けNo.175「壁への熱負荷を減らす-周辺プラズマの制御-」を参照下さい)。そのためには、どこからどれくらい輻射が生じているかを3次元的に計測する必要があります。3次元計測というと、人体の内部を診断するCT検査が思い浮かびますが、CT検査では体の周りをぐるぐると検出器を動かして計測します。それに対して、LHDの3次元輻射計測では、水平・垂直方向それぞれ2ヶ所の計4ヶ所に、赤外線ピンホールカメラを設置して、プラズマを計測しています。
 ピンホールカメラといえば、牛乳パックやお菓子の箱の底に針で穴を開けて、反対側に写真用フィルムを貼って作ったことがあるかも知れません。輻射計測で用いるピンホールカメラも基本的な構造は同じですが、ピンホールの大きさは最大で8mm角と大きく、また、フィルムに対応するスクリーンとして使う白金薄膜の大きさも最大で11cm×15cmと大きなものになっています。白金薄膜は炭素でコーティングして黒色化し、プラズマからの熱の吸収効率を高めています。プラズマからの輻射はピンホールを通って白金薄膜上に温度分布として映し出され、それを薄膜の裏側から赤外線カメラで観察することにより、輻射分布状態を計測することができます。
 開発した赤外線ピンホールカメラを用いて、ダイバータ周辺部からのプラズマ輻射を計測したところ、計算により予測された場所から、強い輻射分布を得ることができました。核融合プラズマの3次元輻射計測は、まだ世界のどこでも成功していない挑戦的な研究です。LHDで開発しているこの計測技術をさらに発展させて性能を向上させることにより、核融合プラズマの研究が一段と進展することが期待されます。

コンピュータによって描いたLHDプラズマの図(左)と、赤外線ピンホールカメラにより計測された白金薄膜上の温度分布(右)。左図のピンク色の線が示すヘリカルダイバータX点と呼ばれる領域で、白金薄膜上の温度が高くなっているのが分かります。これは、この領域からのプラズマ輻射が強くなっていることを示しています。

以上