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平成26年5月12日
コンピュータシミュレーションでプラズマの多階層現象を解く
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)では、1億度にも達する高温のプラズマを磁場で閉じ込めています。このようなプラズマの振る舞いは非常に複雑なため、コンピュータシミュレーションを用いて実験結果の再現・予測を行っています。その際、プラズマの振る舞いは、非常に狭い空間の時間的にも速い現象(ミクロ現象)が複雑に関連して、広い範囲にわたる全体的な現象(マクロ現象)として観測されるため、異なる時間・空間スケールを持つこうしたミクロ現象とマクロ現象を結びつけて解くことが求められています。今回は、このようなプラズマの多階層現象を解くことのできる新しいシミュレーション手法について紹介します。

 人間は様々な機能を持った器官から成っており、器官は細胞から構成されています。そして、細胞は分子や原子から、さらに突き詰めて考えれば、それらは素粒子から成っています。一方、人間が集まると会社や社会、さらには国家を構成します。このように、社会・個体・器官・細胞・原子・素粒子といった、それらを特徴づける大きさや活動する時間などのスケール(規模)が、それぞれの単位で異なっている場合、階層が存在すると言います。そして、自然界には、このように様々なスケールの現象が複雑に絡み合っている多階層現象が多く見られます。
 それぞれの階層での現象は独立して発生しているのではなく、お互いに影響を与えながら全体として1つの現象を作っているため、多階層現象を理解するのは簡単ではありません。個々の単純な総和が全体を表すわけではないのです。そのため、一番小さな階層を調べただけでは全体の振る舞いを理解することはできません。素粒子や細胞の振る舞いだけを調べても、そこからは人間、ましてや社会の変化に関しては何も分からないだろうことは容易に想像ができるでしょう。
 さて、プラズマは多階層現象の宝庫です。LHDの磁場に閉じ込められた高温プラズマでは、それを構成する粒子1つ1つの運動は、10マイクロメートルという非常に小さいスケールです。このようなミクロなスケールで発生したゆらぎや乱流が、装置全体のプラズマ閉じ込め性能に影響を与えます。一方、装置全体におよぶプラズマの構造がミクロスケールのゆらぎや乱流の挙動に大きな影響を与えてもいます。つまり、互いが互いの原因であり結果でもあるのです。
 このような複雑な多階層現象に対して、スーパーコンピュータの中に仮想的に現象を再現するコンピュータシミュレーションでは、これまで階層を個々に分けて、現象をそれぞれ独立に扱うシミュレーションが行われてきました。そこで研究所では、マクロな階層からミクロな階層までを矛盾なく結び付けて解く新しいシミュレーショ手法を開発しました。この新しい手法では、スーパーコンピュータの中に作った連続した仮想空間を、マクロ階層の部分とミクロ階層の部分に分類し、それぞれの階層の現象を表すのにふさわしい異なる方程式を用いて計算します。そして、これらのマクロ階層とミクロ階層を切り離すことなく、互いに必要な情報をやりとりして矛盾無く全体のシミュレーションを進めます。これを多階層シミュレーションと名付けました。
 この多階層シミュレーション手法を核融合プラズマなどで本質的な役割を果たす磁気リコネクションと呼ばれる現象に適用しました。そして、磁気リコネクションにおいてそれぞれの階層がどのように絡み合っているのか、解き明かしつつあります。将来的には、多階層シミュレーション手法を用いて核融合炉のプラズマ全体をスーパーコンピュータに再現して、その挙動を予測することにより、核融合発電所の設計研究を推し進めていくことが期待されます。

以上