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平成26年6月16日
きれいな水素の氷を作る -極低温技術のレーザー核融合への応用-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)のような磁場閉じ込め方式の核融合実験装置では、高温プラズマを磁場の力で閉じ込めていますが、慣性閉じ込め方式の実験装置では、固体水素でできた燃料ターゲットに、強力なレーザー光を四方八方から当てて、高温・高密度のプラズマ状態にします。そのためレーザー核融合と呼ばれています。国内では、大阪大学でレーザー核融合の研究が進められていますが、この方式で重要な燃料ターゲットは独特な形状をしている上、水素を固体にするため、極低温技術が必要となります。核融合科学研究所は、全国の大学と進めている共同研究の一環として、この燃料ターゲットの開発を大阪大学と共同で行っています。今回は、LHDの超伝導磁石の開発と運転で培われた高度な極低温技術を生かして進めている、燃料ターゲットである水素の氷を作る技術開発について紹介します。

 現在開発を進めている燃料ターゲットは、直径0.5ミリメートルの中空で、外層の燃料層の厚さが数十ミクロンのシャボン玉のような構造をしています。シャボン玉は石けん水で作りますが、燃料ターゲットは水素の氷で作ります。シャボン玉を作るように、息を吹きかけて膨らませれば完成、とできれば良いのですが、水素はマイナス260度程度の極低温にしないと氷にならないので、そのように簡単にはいきません。水素の氷を作る技術の開発研究は、まず極低温に冷やすことのできる容器を作ることから始めました。そして、低い温度でも壊れないプラスチックを使って、水素の氷で作るシャボン玉の型枠となるように、燃料ターゲットより一回り大きいサイズで中空の球を作り、その内側に厚さ数十ミクロンの水素の氷を張り付けることを試みました。
 ターゲット自体はとても小さく、ボールペンの先端についたボールほどの大きさでしかないため、顕微鏡を使わないと中の様子を見ることができません。また、極低温の容器に入っているため、自由に触ることもできません。このような状況で、どうやって燃料ターゲットを作ればよいのでしょうか? 研究の結果、日常生活の中でも見ることができる現象を利用した方法を開発しました。ドライアイスは二酸化炭素を凍らせた固体ですが、溶けて液体になったところは通常は見ることができません。二酸化炭素は固体から直接気体になるからです。液体の状態を通らずに、固体から気体または気体から固体になる現象を「昇華」と呼びますが、ある条件では水素も昇華が起こり、直接気体から固体になります。この昇華の現象を利用して、水素の氷をきれいに張り付ける技術の開発に挑戦しています。
 水素を気体の状態でプラスチックの型枠の中に入れれば、重力に関係なくその中を自由に飛び回ります。そして、その型枠が冷えていれば、型枠の内表面で気体の水素は昇華し、氷となって型枠の内側にきれいに貼り付くはずです。目標は丸くなめらかで均一な球形ですが、開発途上の現在は、まだ凸凹が沢山残っています。数年かけて研究を発展させ、この燃料ターゲットの製作技術を確立して、大阪大学での実験に適用する計画です。

 

以上