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平成26年7月28日
2倍、3倍の周波数で広がる加熱領域 -高調波を用いた電磁波加熱-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)では、高温プラズマの生成に、特にプラズマ中の電子の加熱に、周波数が77ギガヘルツ(77,000メガヘルツ)の強力な電磁波が使われています。この電子サイクロトロン共鳴加熱法と呼ばれる加熱法では、プラズマを閉じ込める磁場の強さに対応して、使用できる電磁波の周波数が決まってしまいます。これを基本周波数と言いますが、一方で、高い密度のプラズマを加熱しようとすると周波数を高くする必要があります。そこで、電磁波の周波数を基本周波数の2倍、3倍の「高調波」にしてプラズマを加熱し、その特性が調べられています。今回は、LHDで行われている、電磁波の高調波加熱によるプラズマ加熱領域の拡大を目指した研究を紹介します。

 磁場により閉じ込められたプラズマ中の電子は、磁場の強さに比例した周波数で旋回運動を行っています。この旋回の周波数と同じ周波数(基本周波数)の電磁波をプラズマに入射すると、電磁波のエネルギーが電子に与えられて、プラズマを生成したり、電子の温度を上げたりすることができます。LHDでは、この電子サイクロトロン共鳴加熱法と呼ばれる加熱法により、密度は1cc当たり2兆個程度と低いながらも、2億3千万度の電子温度を達成しています。一方、周波数を決めると、電磁波がプラズマ中を伝わる際に、それ以上進めなくなって反射してしまうプラズマの密度(遮断密度と言います)が存在するため、周波数によっては、密度の高いプラズマ中心部へ電磁波が届かなくなり、プラズマの中心部が加熱できなくなります。LHDでは、磁場の強さに対応した基本周波数の77ギガヘルツ(1秒間に770億回振動する周波数)の電磁波が主に使われていますが、その遮断密度はおよそ1cc当たり74兆個になります。
 将来の核融合発電で必要とされる1cc当たり100兆個以上の密度のプラズマを調べようとすると、LHDの磁場の強さを大きくして、対応する電磁波の周波数を高くしなければなりませんが、それは超伝導磁石の作り直しになるので現実的ではありません。そこで、入射する電磁波の周波数を、電子が旋回する周波数の2倍や3倍に高くして加熱ができないかを研究しています。これを電磁波の電子サイクロトロン高調波による加熱法と呼びます。
 実際には、プラズマの加熱に使う周波数の高い大電力の電磁波は、ジャイロトロンと呼ばれる、高さ約3メートル、重さ約800キログラムの巨大な真空管により発生しますが、発振する電磁波の周波数は固定なため、簡単には変更できません。その代わり、磁場の強さを2分の1や3分の1にして電子の旋回周波数を下げれば、等価的に電磁波の周波数を上げたことになります。これを利用して、LHDにおいて磁場強度を下げ、77ギガヘルツの電磁波を使って、2倍や3倍の高調波による加熱実験を行ったところ、効率は下がりますがプラズマの加熱を確認しました。またこの時、入射方法によっては遮断密度が上がることもわかりました。さらに、この高調波による加熱法は、プラズマの温度や密度が高くなるとより一層電磁波の吸収が良くなるという特性もあります。3倍の高調波を使った実験では、プラズマの温度を段階的に上げることによって、入射した電磁波のパワーの4割程度が吸収され、電子の温度を3.5倍まで上げることに成功しました。これは計算機シミュレーションによる電磁波の吸収結果と良く一致しています。
 LHDでは、これらの結果に基づき、154ギガヘルツと2倍の周波数に高めたジャイロトロンを開発して、実験に適用しています。また、将来の核融合発電所のように高温、高密度でサイズの大きなプラズマに対して、高調波を用いた加熱法はより高い吸収が期待されるので、プラズマの加熱・制御の有力な方法の一つとして期待されています。

以上