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平成26年10月20日
タングステンからの光を調べる -高温プラズマ中のタングステンの状態-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
   

 大型ヘリカル装置(LHD)をはじめとする核融合プラズマ実験装置や国際熱核融合実験炉(ITER)では、高温のプラズマが容器の壁に直接さわらないよう、磁場のカゴにより、プラズマを宙に浮かせて閉じ込めています。一方で、中心部から磁場のカゴの外周部に移動してきたプラズマを終端させるため、磁力線の形を工夫して、プラズマの温度を十分に低下させながら、ダイバータと呼ばれるところの受熱板へ導くような構造を作っています。そのため、ダイバータへの熱負荷を小さくする研究が進められていますが、ダイバータ受熱板は融点の高い丈夫な物質で作る必要があります。その最有力候補がタングステンです。ただし、プラズマ粒子がぶつかる際に削れたりして、ごく少量のタングステンが中心部の高温プラズマ中へ不純物として入ってしまうことがあることから、その影響を調べるための基礎データの収集が進められています。今回は、LHDプラズマを用いて行われている、高温プラズマ中でタングステンが発する光を調べる研究について紹介します。

 タングステンは電球のフィラメントに使われていますが、金属中最も融点の高い代表的な耐熱材料です。そのため、ITERでは、ダイバータ受熱板にタングステンを使用する計画ですが、プラズマの中に不純物として入ると発光し、光としてエネルギーを放出してプラズマを冷やしてしまうので、高温のプラズマが必要な核融合にとっては厄介な存在となる可能性があります。そのため、タングステンがプラズマ中のどこでどのくらいの光を出しているのか、どうしたらプラズマの中心に入らないようにできるのかを調べる研究は、核融合を実現させるカギの一つとなっています。
 そこで、タングステンがプラズマの中でどういう状態にあるのかを調べるため、タングステンからの光を計算する理論モデルを作りました。タングステンがプラズマに入ると、電子がはぎ取られて電離したイオンという状態になりますが、この理論モデルにより、プラズマの電子温度によって、タングステンのイオンがLHDプラズマ中でどのように光るのかを計算することができます。次に、タングステンをごく少量、ペレットという粒の中に入れてLHDプラズマに入射して、タングステンが発する光(この場合は極端紫外光という目に見えない波長の短い光です)を計測しました。このとき、観測した光を波長に分けて測る分光計測をすると、タングステンが発する光の波長ごとのスペクトルが得られ、それを理論モデルで計算したスペクトルと比べて、タングステンイオンのプラズマ中で電離した状態などを調べました。
 この研究によって、プラズマ中でのタングステンイオンの状態が分光計測で分かるようになり、タングステンがプラズマ中でどのように動いているのか、中心へ溜まっていくのかどうかなど、その振る舞いを調べる次のステップへ研究を進めることができるようになりました。こうした研究を発展させて、ITERを含めて、将来の核融合の実現へ向けて貢献していきます。

以上