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平成26年11月17日
身の回りの材料を用いた自然放射能線源 -実践的放射線教育法の開発-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
   

 福島の原子力発電所の事故を契機に、放射線に対する正しい理解の普及と教育の必要性が高まっています。自然界にある身の回りの放射線や日常生活に利用されている放射線を正しく理解することは、放射線に対していたずらに不安を感じることなく、安全に対処することを可能とします。そのため、義務教育課程においても放射線教育が行われるようになりました。研究所では環境中の放射線に関する研究も行っていますが、今回は、その一環として取り組んでいる、自然放射能線源の製作とその教育への実践的な利用について報告します。

 放射能や放射線が自然にあまねく存在することは、日常生活の中ではあまり実感されていませんが、そうしたことをはじめとして、放射線の性質を正しく理解するためには、放射線を実際に測定してみるのが一番です。しかし、それに必要な放射線源は、非常に弱くて安全上全く問題ないものであっても、教育現場で教材として使用する場合、中学生や高校生、一般の人たちにとっては抵抗を感じるのも事実です。そこで、身の回りにあり、自然の中に存在する放射性物質を含んでいるいろいろな物質を材料にして、放射線源を製作することを考えました。
 そうした材料として、乾燥昆布や湯の華があげられます。これらは自然の中にあるカリウム40やトリウム232などの放射性同位元素を含んでいるため、放射線体験学習などにしばしば使用されてきましたが、放射線源として製作した例はありませんでした。そこで、こうした材料による放射線源の製作とそれを用いた放射線教育法の開発を開始しました。
 まず、昆布などを固形の放射線源にするために、材料を粉末にして型枠に入れ、圧縮固形化することにより、丈夫で、取り扱いやすいよう固体状にする圧縮成形法を開発しました。この方法により製作した線源を自然放射能線源と呼んでいますが、これまでに、塩化カリウム(塩の一種)、乾燥昆布、化学肥料、やさしお、湯の華を用いて自然放射能線源の製作に成功しています。自然放射能線源の特徴は、一般のショッピングモールやホームセンター、あるいは通信販売で購入できる普通の物質を材料にしていることです。線源の強度は材料に依存しますが、大気中の放射線レベルの2~10倍程度であり、普通のGMサーベイメーターなどの放射線計測器で容易に測定できるため、放射線教育に利用することができます。
 研究所ではこの特徴を活かし、所員や見学に来所した高校生を対象に、自然放射能線源を利用したいろいろな放射線測定実習を実践してきました。その結果、距離の二乗に反比例して放射線計数率が低減することや、遮蔽体の厚さに対して放射線計数率は指数関数的に低減することなどを確認するための実習の他、放射線計数の測定値の時間的変動の理解や放射線測定訓練などに、開発した自然放射能線源が使用できることが分かり、放射線教育用教材として有用であることが証明できました。
 開発した自然放射能線源は、誰にでも容易に手に入れられる日常的な材料を固めて作ったもので、放出されるのは自然起源の放射線であるため、法の規制を受けることもなく、中学校や高等学校はもちろん、公民館や児童館、一般の家庭においても自由に使用することができます。そのため、自然放射能線源は、人と場所を選ばない、使いやすい線源であるといえます。今後は、自然放射能線源を放射線教育の場に普及させて、放射線の正しい理解を目指した放射線教育に貢献したいと考えています。

身の回りの材料を用いて製作した各種の自然放射能線源
(直径:3.5cm、厚さ:約1cm)

自然放射能線源を利用した放射線測定実習の様子

 

以上