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平成27年1月5日
針を挿入して周辺プラズマを調べる -静電プローブ計測-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
   

 大型ヘリカル装置(LHD)では、らせん状にひねられた電磁石によって磁場のカゴを作り、その中にプラズマを閉じ込めています。そのため、高温度のプラズマは宙に浮いた状態に保たれ、容器の壁と接触することはありませんが、全てのプラズマが磁場のカゴの中に留まっているわけではなく、プラズマの一部は磁場のカゴから漏れ出てきます。漏れ出てきたプラズマは周辺プラズマと呼ばれ、磁場のカゴを取り囲む磁力線に沿って移動し、「ダイバータ板」という受熱板で終端します。周辺プラズマは、磁場のカゴに閉じ込められた高温プラズマの状態に影響を及ぼすことから、ダイバータ板との相互作用も含めて、その振る舞いが精力的に調べられています。今回は、LHDで行われている、「静電プローブ」と呼ばれる計測器を用いた周辺プラズマ研究について紹介します。

 周辺プラズマを導く磁力線は、磁場のカゴを取り囲むようにグルグル回りながら、ダイバータと呼ばれる容器壁の特定の場所に向かっています。磁場のカゴから漏れ出たプラズマは、この磁力線に沿って移動しながら温度を十分に下げてダイバータ板に当たり、中性のガスになります。このガスが中心部のプラズマに戻ると、プラズマを冷やしてしまうため、中性ガスを効率良く排気できるよう、LHDではダイバータ板も含めたダイバータ構造を工夫しています。
 周辺プラズマの温度は十分に低いのですが、ダイバータ板は直接プラズマにさらされることで、無視できない大きさの熱負荷を受けます。将来の核融合発電所ではこの熱負荷は大きくなることが予想されることから、ダイバータ板の材料開発や、ダイバータ板近くのプラズマをうまく冷やして熱負荷を小さくする研究が精力的に進められています。このダイバータ板近傍のプラズマの研究に大きな威力を発揮するのが「静電プローブ」と呼ばれる計測器です。
 プラズマはプラスの電気を持つイオンとマイナスの電気を持つ電子が集まってできているため、鉄や銅などの金属と同じように、例えば2本の電極をプラズマ中に挿し込んで電圧をかけると、電極間には電流が流れます。この電圧と電流の関係を調べると、電子やイオンの密度や温度などのプラズマの性質を評価することができます。このような計測方法を静電プローブ法と呼び、プラズマに挿し入れる電極のことを静電プローブと呼びます。静電プローブ法は、「探針」と呼ばれる針の形をした小さな電極をプラズマ中に挿入するため、局所計測に優れていますが、高温プラズマでは電極が損傷してしまいます。その点、周辺プラズマは温度が低いので、問題ありません。
 LHDでは現在、約460個の静電プローブを様々な場所のダイバータ板上に埋め込み、ダイバータ板近傍の周辺プラズマに発生する3次元的で複雑な現象を捉えています。最近、外部から小さな磁場を局所的に加えて、ダイバータ板へ向かう磁力線の形状を変えることにより、周辺プラズマによるダイバータ板への熱負荷が著しく低減する「非接触ダイバータ」と呼ばれる状態を発見し、それを安定的に維持することに成功しました。そのとき、様々な場所の静電プローブ計測から、外部から加えた磁場の条件により、熱負荷の低減する場所の分布が変化することを明らかにしました。今後は、得られた実験データをコンピュータ・シミュレーションによる理論計算と突き合わせることにより、より詳細な空間分布を明らかにして、将来の核融合発電所の設計に貢献していきます。

以上