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平成27年2月23日
対流の抑制 -スーパーコンピュータによる数値シミュレーション-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
   

 気体(ガス)の温度を上げていくと、原子から電子が離れてイオンとなり、それぞれが自由に飛び交うプラズマ状態になります。高温プラズマは、このようにイオンと電子からなる電離気体であり、その性質はイオンや電子の個々の粒子の動きで決まりますが、一方で、粒子が集まった集団の振る舞いを見ると、プラズマは流体としての性質も示しています。その代表的な振る舞いが対流です。イオンや電子は電気を帯びた粒子である上、大型ヘリカル装置(LHD)のような磁場閉じ込め核融合実験装置では、それらを磁場で閉じ込めているため、プラズマの対流はきわめて複雑な現象です。今回は、スーパーコンピュータを用いて行われている高温プラズマの対流現象に関する研究について紹介します。

 自然界にはさまざまな乱れた流れが存在します。身近なところで例を挙げましょう。湯を沸かそうとしてやかんに水を入れて火にかけると、火に熱せられた下の部分は熱くなりますが、上の部分は冷たいままです。その結果、熱せられた水が上昇する対流が起こり、さらにこの対流が乱れた流れとなって、熱い部分と冷たい部分が効率的に混ざります。この対流は、重力が鉛直下方向に作用するために発生します。
 こうした対流現象は、LHDの強い磁場によりドーナツ状に閉じ込められた高温プラズマにおいても発生します。LHDではドーナツ状のプラズマの中心部(芯)を加熱しますが、その結果、やかんの中の水と同様に対流が起こります。プラズマは磁場により閉じ込められているので、芯に向かって重力が働いているような状態にあり、ドーナツの芯がやかんの下部分の水に、ドーナツの表面がやかんの上部分の水に対応します。将来の核融合発電では、芯の部分を可能な限り熱くしたいので、この対流は抑制する必要があります。磁場に閉じ込められたプラズマはやかんの中の水とは異なり、磁場に関係した構造を形成します。そしてこの構造を制御すると、対流の発生を妨げて、自発的に芯の部分の熱を逃がさないようにする現象が生じます。
 そうした現象を調べるため、正の電荷を持つ重いイオンとともに負の電荷を持つ軽い電子の運動を同時に解く数値シミュレーションコードを国内で初めて開発しました。イオンより数千分の1と軽い電子の運動をイオンと同時に数値シミュレーションするには、非常に性能の高いコンピュータを必要とします。研究所のスーパーコンピュータを用いて、1カ月にも渡る長時間の計算を行うことにより、LHDにおいてプラズマの圧力が高いときに現れる対流の様子を初めて捉える事に成功しました。この圧力が高いときに現れる対流は、圧力が低いときには現れなかったもので、これまで明らかにされたものと根本的に異なる新しい物理機構によって生み出されます。そして、この新しい対流は、ドーナツに沿った方向の構造に起因して抑制されることを発見しました。この新たな対流抑制機構は、磁場に閉じ込められたプラズマの温度が高いときに発現するため、将来の核融合発電の実現へ向けて重要な機構であると考えられます。

以上