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平成27年3月11日
プラズマ中の水素負イオン密度を測る -負イオン源の高性能化を目指して-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
   

 大型ヘリカル装置(LHD)では、磁場に閉じ込められたプラズマを高温度に加熱するために、中性粒子ビーム入射装置を用いています。これは、高いエネルギーに加速された水素の粒子ビームをプラズマに入射させて、ビームの持つエネルギーでプラズマを加熱する装置です。この粒子ビームは水素イオン源と呼ばれる機器で生成しますが、LHDでは高いエネルギーの粒子ビームを得るために、世界に先駆けて負イオンをビームに用いる負イオン源を開発しました。そして、この負イオン源の性能をさらに向上させる研究を現在進めています。今回は、負イオン源の高性能化を目指す研究の一環として行われている、負イオン源プラズマ中の負イオン密度の計測法の研究について紹介します。

 水素イオン源では、まず、水素イオンを含むプラズマを生成します。水素イオンは電気を帯びているので、このプラズマに電圧をかけて水素イオンを引き出し、さらに高い電圧をかけて加速することにより、高エネルギーの水素イオンビームを生成します。通常のプラズマは正の電荷を持った正イオンと負の電荷を持った電子で構成されているので、これまでは水素正イオンがビームとして使われていました。しかし、LHDのような大型装置では、数百kV以上の電圧で加速された高いエネルギーのビームが必要となり、そのためには、負の電荷を持った水素「負」イオンをビームにしなければなりません。
 水素正イオンは水素原子から電子がはぎ取られた状態ですが、水素負イオンは水素原子に電子がくっ付いた状態です。通常のプラズマ中には水素負イオンはほとんど存在しないため、金属表面に接したプラズマからの水素に電子を与える方法を確立して、プラズマ中の水素負イオンの密度を高めることに成功しました。この負イオン源の性能を向上させるためには、高密度の水素負イオンを生成し、それを効率よくビームとして引き出すことが必要です。それに向けて、水素負イオンが生成されてからビームとして引き出されるまでの詳細な仕組みの解明に取り組んでいます。そのため、様々な計測手法を駆使していますが、その中でも水素負イオン密度計測法に大きな進展がありました。
 開発した水素負イオン密度計測法は、キャビティ・リングダウン法(CRD)と呼ばれる手法で、プラズマをはさんで鏡を対向させた光共振器にレーザー光を通し、数万回以上もレーザー光がプラズマ中を往復する間に、負イオンに吸収される光の減衰を測ることにより、光共振器内の負イオン密度を計測します。レーザー光と光共振器の位置を精度良く一致させながら、共に縦・横の二次元に移動させることを可能にして、CRDによる水素負イオン密度の二次元分布計測を世界で初めて実現しました。これにより、プラズマから負イオンを引き出す電極からの距離が離れるにつれて、負イオン密度が低くなるという結果が得られました。負イオンは金属表面である電極上で生成されるように工夫していますが、得られた結果はこのことを実証しており、さらには、それから予想される結果と一致していたことから、国際的に高く評価されています。今後は、この二次元水素負イオン密度分布計測と他の計測機器を組み合わせて、水素負イオンの生成からビームとして引き出されるまでの仕組みの解明に向けて、更に研究を推進していきます。

以上