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平成27年3月23日
プラズマ中の衝撃波による粒子加速メカニズムを解明
 -プラズマシミュレータを用いた研究紹介―
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
   

 電気を帯びた粒子の集まりであるプラズマは、とても多様で複雑な振る舞いをします。そのようなプラズマの性質を明らかにするためには、スーパーコンピュータを使った大規模な計算機シミュレーションが欠かせません。核融合科学研究所には「プラズマシミュレータ」というスーパーコンピュータがあり、大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマの振る舞いを理解し予測するために活用されています。また、全国の大学の研究者や大学院生によって、シミュレーション手法の開発や、様々なプラズマの複雑な現象を調べるためにも利用されています。今回は、そのようなシミュレーション研究の一つを紹介します。
 太陽のエネルギー源は核融合反応ですが、太陽は光や熱だけでなくプラズマも宇宙空間に放出しています。太陽表面の大気であるコロナはおよそ100万度のプラズマで、電子とイオンが飛び交っている状態ですが、そこでは時々フレアと呼ばれるプラズマの大放出が起こることがあります。太陽フレアが起こると大量のプラズマが地球周辺にやってきて、南極や北極の上空でオーロラを発生させたり、磁場の乱れによる停電や通信障害を引き起こしたりします。また、太陽フレアは非常に高いエネルギーの電子やイオン(以下、高エネルギー粒子)も作り出します。それらの粒子はフレアが起こる前に比べて100万倍ものエネルギーになることもありますが、どのようにして加速されるのかは未だ解明されていません。そこで、高エネルギー粒子の加速のメカニズムを、プラズマシミュレータを使って調べています。
 高エネルギー粒子の生成では、衝撃波が重要な役割を果たすと考えられています。地球上でも、例えば火山の大噴火などによって衝撃波が発生します。2013年2月にロシアに隕石が落下した時には、衝撃波によって多くの窓ガラスが割れるなどの大きな被害が出ました。太陽ではフレアによって発生した衝撃波が、電子とイオンからなる太陽大気のコロナ中を広がっていきます。そして、電子とイオンは衝撃波と出合うと複雑で激しい運動を始めます。また、それらの粒子の運動によって電場や磁場が変化し、その電磁場がさらに粒子の運動に影響を与えます。このような多数の粒子の運動と電磁場のふるまいをプラズマシミュレータで追跡することによって、プラズマ中の衝撃波が粒子を高エネルギーに加速する様子を再現できるようになりました。シミュレーション結果は、太陽フレアで作られる粒子のエネルギーを説明できるものです。また、正の電荷を持つ重いイオンと負の電荷を持つ軽い電子はそれぞれ異なるメカニズムで加速されることや、それらの加速がどのような条件で起きるのかも明らかになってきました。
 今後は、スーパーコンピュータの性能がさらに向上するため、その性能を最大限活用するための計算手法を開発し、より大規模で高精度のシミュレーションでプラズマ中の衝撃波による粒子加速を検証していきます。また、太陽フレアによって作られる高エネルギー粒子は、人工衛星に搭載された機器を故障させたりするため、地球への到来を予測する必要があります。その予測精度の向上のためにも、高エネルギー粒子の生成メカニズムの解明が更に進むことが期待されています。

以上