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平成27年7月13日
プラズマ中の電場構造を計測する 
 -重イオンビームプローブ法による二次元電位計測-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 プラズマは、正の電気を持つイオンと負の電気を持つ電子がばらばらになった状態です。イオンや電子は磁力線に巻きつく性質があるため、大型ヘリカル装置(LHD)では磁力線のカゴを生成することにより、プラズマを閉じ込めています。ところが、イオンと電子はプラズマ中での振る舞いが異なるため、条件によっては、それぞれが持つ電気によりプラズマ中に電場が発生します。この電場によってプラズマ中に流れが生じ、高温プラズマの閉じ込め性能に影響を与えます。閉じ込め性能を改善するためには、プラズマ中の電場構造を計測し、その生成メカニズムを調べることが重要です。
 プラズマ中の電場構造は、電位分布を計測することで得られます。その計測方法の一つに重イオンビームプローブ法(Heavy Ion Beam Probe, HIBP)があります。この方法では、重元素イオンの高速ビームを外からプラズマ中に打ち込んで電位を計測します。(電位が計測できる理由については、バックナンバー208をご覧下さい。)イオンビームは磁力線の影響で曲がってしまいます。LHDではこれまで、イオンビームがなるべく曲がりにくくなるよう、600万ボルトという大きな電圧で加速した金イオンのビームを使用してきました。このビームのプラズマへの入射角を変えることよって、電位の一次元分布(ある線上での電位分布)が計測されてきました。
 今回、イオンビームの入射角を変えるだけでなく、ビームの加速電圧を600万ボルトから変化させることによって、電位の二次元分布(ある面上での電位分布)を計測できるようになりました。加速電圧を変えるとイオンビームの速さが変わり、ビームがプラズマ中に侵入できる深さを変えることができます。このため、ビームの入射角と加速電圧の二つを変化させると、プラズマ中の電位の二次元分布が分かります。しかし、加速電圧の変更は、簡単ではありませんでした。
 HIBPの加速器は、LHDの強い磁場の影響を避けるため、LHD本体から離れたところに設置されています。この加速器で生成された高エネルギーのイオンビームは、ビーム輸送ラインと呼ばれる20mほどの配管を通ってLHDまでやって来ます。イオンビームは、LHDに近づくにつれて強い磁場の影響を受けて、曲がろうとしてしまいます。そこで、ビーム輸送ラインに電極をたくさん設置し、これらの電極に電圧をかけて、イオンビームの曲がりを補正しています。イオンビームの曲がり方は、磁場の強さだけでなく、イオンビームの速さによっても変わります。このため、加速電圧を変えて、イオンビームの速さを変えると、ビーム輸送ラインの電極電圧を全て変更し直さなければなりません。これまでは、この変更にかなりの時間を要したため、電位の二次元分布計測は困難でした。しかし、今回、自動制御システムを構築することにより、ビーム輸送ラインの電極電圧の変更にかかる時間を大幅に短縮することができました。これにより、HIBPを用いて、プラズマ中の電位の二次元分布を計測することに成功しました。今後、このHIBPの二次元分布計測の能力を利用して、電場構造や流れがプラズマの閉じ込め性能に与える影響を詳細に調べ、プラズマの更なる高性能化を目指します。

以上