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平成27年8月24日
マイクロ波イメージング
 -核融合研究から生まれる新しい画像診断技術-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 「百聞は一見にしかず」と言います。病院でもCTやエコーなどの画像診断による病巣の観察が行われていますが、核融合研究でも観察はとても大事です。大型ヘリカル装置 (LHD) では、プラズマを1億度にも達する超高温に加熱しています。そのような超高温のプラズマからは、目に見える光、つまり可視光はほとんど放射されません。そのため、LHDプラズマ内部で起きている複雑な現象の観察はとても困難でした。そこで、数ある電磁波の中でも、プラズマにより反射されるマイクロ波を、外からプラズマ内部へ入射して反射されてくるマイクロ波を観測することを考えました。反射されるマイクロ波の周波数はプラズマの密度によって変わります。プラズマの密度は、プラズマ内部で分布をもっていますので、色々な周波数のマイクロ波をプラズマに入射し、反射されてくるマイクロ波を観測すれば、プラズマ内部を立体的に観察することができるはずです。しかし、この観測に必要な、マイクロ波を写すカメラはこれまで存在していませんでした。
 そこで、核融合科学研究所では、九州大学、関西大学、東京工業大学、東京農工大学、福岡工業大学、宇部工業高等専門学校、分子科学研究所などの研究者や技術者と共同で、マイクロ波カメラの開発を進めてきました。携帯電話の発達でマイクロ波用の半導体部品が市場に出回るようになったこともあり、平成26年には8x8画素の高感度高速マイクロ波撮像素子を備えるカメラを開発することができました。これまで2次元のマイクロ波撮像素子はありませんでしたので、大きな進歩です。開発したマイクロ波カメラを用いて、LHDでプラズマ観察を試みました。LHDのプラズマに25~35GHzの4つの周波数のマイクロ波を同時に照射し、反射されてくるマイクロ波をマイクロ波カメラで捉えることにより、プラズマを立体的に観察することができました。今後この観察を、コンピュータを駆使したデータ解析と組み合わせることにより、プラズマ内部で起きている複雑な現象の解明が進むことが期待できます。
 さて、マイクロ波は衣服や霧を透過します。マイクロ波カメラには衣服に隠された武器の発見や、飛行機や船舶の濃霧中の安全運行などへの応用が期待されます。また、低周波数のマイクロ波はコンクリートや人体をある程度透過します。CTに利用できればX線被曝のない新たな画像診断が可能となります。LHDで用いたマイクロ波カメラと、CT用のマイクロ波カメラとは、装置が90%共通です。そこで、マイクロ波カメラ開発グループは、マイクロ波CTの理論研究を行っている長崎大学と共同でマイクロ波CT診断の研究開発も始めました。
 核融合プラズマの観察から始まったマイクロ波カメラの開発ですが、今後医療や産業分野における新しい画像診断技術への発展が期待されています。

以上