核融合科学研究所 > 一般の方へ > 研究活動状況 > プラズマ加熱用の電磁波を高効率・高品質で伝送する

平成27年12月7日
プラズマ加熱用の電磁波を高効率・高品質で伝送する
-導波管中の電磁波伝搬の計算機シミュレーション-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)では、プラズマ中の電子を、高い周波数の電磁波を使って加熱しています。この電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH)と呼ばれる方法では、ジャイロトロンという装置で発生させた強力な電磁波をプラズマに入射し、その波のエネルギーを電子に吸収させて加熱します。ここで、ジャイロトロンとLHDの間には「導波管」があり、電磁波がLHDのプラズマの方へと導かれています。ECHで電子を高い温度に加熱するためには、ジャイロトロンのパワーを上げること、電磁波のエネルギーを無駄なく電子に吸収させることが必要ですが、それらに加えて、導波管による電磁波の伝送を最適なものにしなければなりません。今回は、そのような導波管の設計のために行われている計算機シミュレーション研究を紹介します。
 ジャイロトロンとLHDをつなぐ導波管は、電磁波のエネルギーの損失を少なくして、電磁波を高い効率で伝送できるものでなければなりません。また、電磁波の位相や振動方向、エネルギー分布なども電子の加熱に重要な影響を与えるため、それらを加熱に適した状態で維持するという高品質化も必要です。これらの高効率化と高品質化のために、現在、導波管の内壁面は櫛の歯の形状に微細加工されています。導波管中の電磁波の伝わり方は、導波管の壁の表面を流れる電流によって強い影響を受けます。このため、内壁面の形状は、壁表面での電流の流れにくさを表す量である表面抵抗率を近似的に計算し、それを基に試作品が作られ、実験と測定を繰り返して改良されてきました。ところが、試作品の基となる表面抵抗率の近似計算には、導波管の内壁の正確な形状やその壁面で発生する渦電流などの効果を取り入れることができないという問題がありました。このため、この方法で実現できる電磁波伝送の高効率化と高品質化には限界があり、より精度の高い計算が望まれていました。
 そこで今回、より高精度の計算を行うため、複雑な壁形状を持つ導波管内を伝わる電磁波をシミュレーションするための計算プログラムを開発しました。ジャイロトロンとLHDをつなぐ導波路は、直線状で内壁を櫛の歯状に加工した「コルゲート導波管」と、「マイターベンド」という電磁波の経路を90度曲げるための導波管を組み合わせて構成します。今回開発したプログラムによって、これらの導波路内の電磁波の伝わり方を、内壁の形状を従来よりもはるかに正確に取り入れて、計算できるようになりました。この結果、電磁波が導波管を通ったのちに、電磁波の構造がどれだけ変化するかを、より高い精度で評価できるようになりました。また、導波管壁面で発生する渦電流の分布を求めることができるようになりました。これにより、マイターベンド部分の渦電流の発生を少なくして、電磁波の伝送効率を向上させるための新たな方法を提案しました。さらに、マイターベンドには、電磁波の振動方向すなわち偏波方向を変えることのできる「偏波器」が取り付けられていますが、今回のプログラムによって、今まで困難であった偏波器による電磁波の偏波方向の変化を、より正確に詳細に計算することも可能になりました。このように、新しいプログラムを活用することで、導波管の最適化が可能になり、プラズマ加熱用の電磁波伝送の効率と品質が更に向上することが期待されます。

以上