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平成28年1月27日
酸化エルビウム電気絶縁被覆の広範囲成膜に成功
-先進ブランケットのための配管内高性能被膜技術開発-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 将来の核融合発電では、プラズマからの高速粒子の運動エネルギーを熱エネルギーとして取り出して、取り出した熱によって高温高圧ガスを作ってタービンを回すことで発電します。高速粒子を受け止めて熱エネルギーを生み出し、その熱を冷却材によって外に取り出す役割をする機器が、プラズマを包み込むように配置される「ブランケット」です。ブランケットは「毛布」の英語名で、プラズマを毛布で包むように見えることに由来します。
 核融合科学研究所では、高温で液体となるリチウム合金やリチウム溶融塩を冷却材として循環させる先進的なブランケットの開発を目指した研究を行っています。これらリチウム合金やリチウム溶融塩は、万が一外に漏れ出しても固まるだけで、ナトリウムのように爆発や火災の心配がありません。さて、この先進ブランケットの内部には、多数の配管が通してあり、そこに冷却材を流す構造になっています。ところが、大型ヘリカル装置(LHD)のような磁場閉じ込め方式では、プラズマを閉じ込めるために強い磁場が発生しているため、ある問題が発生します。これらの冷却材は電気を流す性質があるため、強い磁場が作用して、冷却材の流れを妨げる力が働いてしまうのです。その力を弱める最も効果的な対策が、金属配管の内面に薄い電気絶縁膜を付けることです。核融合科学研究所では、国内外の大学や研究機関との共同研究により、酸化エルビウム(Er2O3)で配管の内面を被膜することによって、この問題を解決できることを見出しました。また、Er2O3を均質にそして広範囲に金属部材の表面に成膜できる方法を開発しました。今回は、原料を含む気体の化学反応を利用した成膜法である、化学蒸着(CVD)法によるEr2O3被覆層の開発成果を紹介します。
 CVDによるEr2O3被覆層は、気体となったEr錯体分子と酸素が結合することで金属基材表面上に連続的に生成(エピタキシャル成長)します。生成された被覆層の物性を評価したところ、ブランケットの想定される運転温度で優れた電気絶縁性があること、さらにはリチウム合金の流れを阻害しない効果と水素透過量を1/100から1/1000まで低下させる効果を見出しました。一方、実用性の観点から広範囲にEr2O3被覆を均質に成膜することを試み、ステンレス鋼パイプ等の内壁全域にEr2O3被覆層を生成することに成功しました。このように、先進ブランケットに適用可能な高機能被覆の物性評価及び広範囲成膜技術開発は着実な進展を示しています。
 現在は、Er2O3被覆層の更なる高性能化を目的にした積層型の厚膜化プロセスの開発や耐久性や化学反応性を含めた詳細な物性評価を国内外の大学や研究機関との共同研究によって精力的に進めています。さらに、実際のブランケットを模擬した実環境統合化試験を予定しており、これまでよりもさらに深化したEr2O3被覆層の知見が得られるでしょう。

以上