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平成28年2月17日
プラズマの乱れと熱の閉じ込めを予測する
-最新鋭スーパーコンピュータで再現するLHD重水素プラズマ-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合発電の実現には、プラズマに蓄えられた熱を長時間閉じ込めて1億度以上の超高温の状態を維持する必要があります。この熱の閉じ込めに最も影響するプラズマ中の現象は「乱流」です。高温のプラズマの内部では時おり大小様々な流れや渦が発生し、それらが不規則に乱れた乱流状態になることがあります。乱流は海洋や大気でも起こる身近な現象ですが、プラズマ中で乱流が発達すると、プラズマが掻き混ぜられることにより温度が低下してしまいます。この乱流を可能な限り弱くし、より高性能なプラズマを実現するためには、乱流が発達する条件やその詳しい性質を明らかにしていく必要があります。核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では、プラズマ性能の向上のために重水素を用いた実験を予定していますが、これまで用いてきた軽水素の2倍の質量を持つ重水素のプラズマにおいて、乱れや熱の閉じ込めがどのように変化するかを解明することが主要課題のひとつになっています。また、プラズマの乱流現象はとても複雑であり、その性質の理解や熱の閉じ込めの予測においては、実験に加えて最新鋭スーパーコンピュータの全性能を駆使した大規模シミュレーションが極めて重要な役割を担っています。今回は、LHDの重水素プラズマの乱流のシミュレーション研究を紹介します。
 多数のイオンと電子からなるプラズマの乱流のシミュレーションは、膨大な計算量を要します。水や空気の流動現象は、通常の3次元空間における運動を表す方程式を計算して調べることができますが、磁場で閉じ込められたプラズマの乱流の振る舞いを解析するためには、プラズマ特有の複雑さや多様性のために、5次元空間(粒子の3つの位置座標に速度の2成分が加わった数学的空間)の運動を表す方程式を、膨大な数の座標点を配置して、計算しなければなりません。さらに、プラズマの乱流のシミュレーションを難しくしているのは、とてつもなく速い電子の運動(秒速数万km)と比較的遅いイオン粒子の運動(秒速数百km)を同時に扱わなければならないことです。より重いイオン粒子ほど電子との速度差が大きくなるため、より大規模で長時間のシミュレーションが必要になります。このため、これまでLHDの軽水素プラズマの乱流シミュレーションは行われていましたが、重水素プラズマのシミュレーションはとても困難でした。今回、平成27年6月に更新された研究所の最新鋭のスーパーコンピュータ「プラズマシミュレータ」によって、これまで以上に大規模なシミュレーションが可能になり、LHDの重水素プラズマの乱流シミュレーションを世界で初めて実現することができました。そして、磁場の中を往復運動する「捕捉粒子」が生み出す乱れを軽水素プラズマと重水素プラズマで比較し、重水素プラズマでは乱れが抑制されて熱の閉じ込めが改善されることを予測しました。また、その機構を調べ、重水素プラズマでは、「ゾーナルフロー」と呼ばれる比較的大きな構造を持つ帯状の流れが強く、その流れが大きな渦や波を効果的に分断して乱れを抑制し熱の閉じ込めを改善していることも明らかになってきました。
 プラズマシミュレータの高い性能がもたらしたこれらの成果は、今後のLHD重水素実験におけるプラズマの高性能化の研究につながるものです。

以上