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平成28年4月1日
電気の父「ファラデー」が発見した現象を起こす光学素子を焼き物で作る
-プラズマ計測の精密化に向けて-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

  皆さんは、「マイケル・ファラデー」を知っていますか?ファラデーは、モーターや発電機の原理である電磁誘導の法則を発見した「電気の父」として知られている英国の科学者です。高校の物理の授業でフレミングの右手の法則が出てきます。「電」(中指)・「磁」(人差し指)・「力(導体の動く方向)」(親指)です。これは、後年、フレミングがファラデーの発見した原理を使いやすいようにまとめたものです。電磁誘導の言い方を変えますと、磁場(人差し指)の中で導体が動く(親指)と導体の中に起電力が発生して電流(中指)が流れる、ということになります。現在の生活では、電車や電化製品の恩恵を受けていますが、これらはファラデーのおかげとも言えます。ちなみに、プラズマを磁場で閉じ込める時の説明に使われるフレミングの左手の法則も、「電」(中指)、「磁」(人差し指)、「力」(親指)です。この時の「力」は電気を帯びた粒子が受ける力です。
 ファラデーは数々の科学的業績を残していますが、光に関連する重要な発見の一つが「ファラデー効果」です。光は波の性質を持っていて、いろいろな方向に振動します。その中で、いろいろな方向の振動から1つの振動だけを抜き出した光を「偏光」といいます。海釣りなどで使用する偏光サングラスは、特定の方向に振動する偏光だけを通さないように設計されたフィルターが眼鏡に取り付けられていて、海面からの反射光を防いでいます。ファラデーは、この「偏光」した光を磁場中に置いたガラスに通すと、偏光の向き、すなわち、光の振動方向がくるくると回転することを発見しました。この現象はファラデー効果と呼ばれ、今まで無関係だと思われていた光と磁場が、互いに関係のある現象であることを示す重要な発見であると同時に、人間が光の偏光を操作するためにも重要な発見となっています。先ほど紹介した、海からの反射光を防ぐ偏光サングラスの前でファラデー効果によって偏光の向きを変えると、光をブロックしたり、透過させたりすることができるようになります。
 核融合プラズマの研究では、プラズマの状態を調べるためにレーザー光を使っています。そのレーザー光の操作に、このファラデー効果を利用しています。ファラデーが実験した頃は鉛ガラスという材料を用いてファラデー効果を起こしていましたが、核融合プラズマの研究で使うレーザー光に用いるためには、鉛ガラスは適していません。熱に弱く、割れやすいためです。最近、日本の技術で透明なセラミックス、つまり透明な焼き物を作ることができるようになりました。透明なガラスは身近にたくさんありますが、透明な焼き物を作るためには大変な技術が必要です。核融合科学研究所では、民間企業や国内外の研究機関と共同で、この透明な焼き物を作る技術でファラデー効果を起こす光学素子を作成しました。焼き物は熱にとても強く、いろいろな混ぜ物をすることが可能なため、焼き物の技術を使うことで、光学素子の性能が大きく向上することが分かりました。
 少し詳しく説明しますと、光学素子の材料には、テルビウムガリウムガーネットを用いました。テルビウム、ガリウムは各々原子番号65、31の元素、ガーネットは柘榴(ざくろ)石です。この材料がファラデー効果を起こすことは知られていましたが、これを透明な焼き物にすることによって、熱伝導率(材料中の熱の伝わりやすさ)、線膨張係数(熱によって材料が伸縮する割合)、屈折率の温度変化率(温度によって材料中の光の進みやすさが変化する割合)やファラデー効果の大きさなどを改善しました。そして、この透明なテルビウムガリウムガーネットの焼き物を使って、新しい光学素子を開発しました。
 今回開発した新しい光学素子では、従来のガラス材料を用いた素子よりも、20倍も強力なレーザー光の偏光を操作できることが分かりました。これは、レーザー光を繰り返し入射する場合は、1回当たりのエネルギーは同じままで、時間間隔を短くして繰り返しの回数を20倍にできることを意味します。レーザー光によるプラズマ計測の繰り返しを現状よりも20倍向上させることで、計測の時間分解能を上げ、時々刻々と変化するプラズマの状態を、より精密に調べることを可能にします。このように、電気の父「ファラデー」が発見した現象を起こす光学素子を、焼き物の技術を使って高性能化し、プラズマ研究を更に発展させていくことができるのです。

以上