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平成28年5月11日
プラズマの新しい閉じ込め状態を発見
-日米合同研究グループの成果-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では、磁場で閉じ込めた高温・高密度のプラズマの状態を測定する手法の開発も行っています。今回は、LHDで開発した手法を米国のプラズマ実験装置に応用することで得られたプラズマの断熱性能に関する新発見について紹介します。

 核融合発電の実現を目指して、高温・高密度のプラズマを、目に見えない磁力線で編んだ入れ子状のカゴで閉じ込める研究が、世界中で行われています。入れ子状のカゴで閉じ込められたプラズマは、中心部では温度が高く、中心から外側に向かって温度が低くなっていますが、核融合発電の実現には、中心部の温度を高くする優れた「断熱性能」が要求されます。身近なもので断熱性能が高いものに、魔法瓶や羽毛布団などがありますが、重宝しますね。核融合では、この断熱性能を「閉じ込め性能」と呼んでいます。閉じ込め性能が良いと、小さな半径で高温プラズマを保持できることから、核融合炉を小型化でき、その建設費用を抑えることができます。

 核融合科学研究所では、プラズマの中で閉じ込め性能が高い領域を見つける方法として「瞬時加熱伝播法」を考案して、LHDでその有効性を研究してきました。この手法はプラズマの打音検査とも言うべき方法です。打音検査で叩いた後の音を聞いて金属の状態を調べるように、プラズマに瞬間的に熱を与えて、その熱が伝わる速さ(伝播速度)からプラズマの閉じ込め性能を調べます。閉じ込め性能が高くなればなる程、熱が伝わる速さが遅くなるので、伝播速度から閉じ込め性能を推定することができます。
 LHD実験では、この瞬時加熱伝播法を用いて「磁気島」と呼ばれる領域の閉じ込め性能を調べてきました。プラズマを閉じ込める入れ子状の磁力線のカゴは、断面が木の年輪のような形状になっていますが、その中に、木目に現れる節のような三日月形の領域が現れることがあります。その領域は川の中の島のように見えることから「磁気島」と呼ばれています。LHD実験では、これまでに、磁気島の外の領域よりも7倍も高い閉じ込め性能を持つ磁気島が観測されていました。
 今回、瞬時加熱伝播法を、米国のサンディエゴにあるジェネラルアトミックス社のDIII-Dというプラズマ実験装置に応用しました。そして、日米合同のグループで研究した結果、閉じ込め性能が磁気島の外の領域より40倍も高い「特に優れた磁気島」を発見しました。さらに、閉じ込め性能が5倍高い「良い磁気島」と「特に優れた磁気島」の2つの異なる状態を行ったり来たりする現象(自励振動)も観測できました。つまり、磁気島は、中に温度変化が伝わりにくい状態(閉じ込め性能5倍)と、更に伝わりにくい状態(閉じ込め性能40倍)が交互に繰り返されたというわけです。

 この自励振動の発見は、プラズマの閉じ込め性能に多様性があることを意味しています。多様性とは、プラズマは、温度勾配に対応する熱流束(単位時間、単位面積あたりに熱が伝わる量)の値が1つではなく、2つの値を取るというということ指しています。これは、銅の棒など物の中を伝わる熱流束の値が、両端の温度を決めれば、1つに決まることに対して、プラズマは遙かに複雑な振る舞いをすることを示しています。今後は、閉じ込め性能の優れた磁気島を保持するためには、どのようにすれば良いのかを明らかにする必要があります。現在、その指導原理を得るため、理論と実験の両方から、磁気島の自励振動現象を詳しく調べています。
 このように、LHDで開発した手法を米国の実験装置に応用することで、今後の核融合研究への大きな貢献が期待される成果が得られました。この研究成果は、英国ネイチャー・パブリッシング・グループの科学雑誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載され、核融合科学研究所とジェネラルアトミックス社の日米合同研究グループの大きな成果として、新聞やインターネットのニュースでも大きく取り上げられました。

以上