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平成28年6月22日
電子ビームを当てて発光を調べる
-核融合炉用セラミック材料の発光データを収集-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 将来の核融合炉では、金属材料の表面にセラミック材料を被膜し、電気的に絶縁したり、ガスの透過や腐食を防止したりする機能を付加します。また、プラズマの観測窓にも光を通すセラミック材料が使われます。質の良いセラミック材料が求められるため、このような機能を十分に発揮させるためには、予め材料の状態を調べておく必要があります。今回は、このセラミック材料の状態(例えば、原子の並び方の規則正しさ、本来あるべき原子位置に原子が存在せずに孔が空いている欠陥の数、不純物の混入など)を短時間で正確に調べることができる「カソード・ルミネッセンス(電子ビーム誘起発光測定)」という方法と、核融合炉用セラミック材料にこの方法を応用した研究を紹介します。

 カソード・ルミネッセンス(以下CL法と略す)は、今ではほとんど目にすることがなくなったブラウン管カラーテレビの表示方法と同じく、電子ビームを使用します。ブラウン管カラーテレビでは、電子ビームが当たると赤、緑、青に光る蛍光材料が画面の内側に塗られていました。CL法は、電子ビームを材料に当てて発せられる光の色(すなわち光の波長)と光の強度から、材料の種類や色々な結晶の状態を調べる方法で、半導体材料の研究や鉱物の分析等にも広く利用されています。
 核融合炉で使用を検討しているセラミック材料には様々なものがありますが、それらの材料は、核融合炉で予想される環境下での試験を行って、その状態を分析することが必要です。私達は、その状態分析にもCL法が応用できるのではと検討を始めました。ところが、核融合炉用のセラミック材料の多くは、電子ビームによる発光のスペクトル(光の波長に対する強度分布)が調べられておらず、状態分析を行う際に必要となる、発光スペクトルと結晶の状態との関係を表すデータはほとんどありませんでした。そこで、まずは、新しくデータベースを作る研究を進めています。電子ビームを当てた時に発する光の色は材料の種類によって違うため、どのような色で光るのか、そして、結晶の状態が変わるとその色がどのように変化するかを調べ、そのデータを収集しています。これまで、例えば、配管の内側を絶縁被膜する酸化エルビウム(バックナンバー267を参照)という材料では、紫、緑、赤色が混ざって光りますが、原子の並びが乱れると、赤色の光が弱くなることが分かりました。また、同じく被膜材の候補である酸化イットリウムという材料は、通常は紫、青、緑色が混ざって光りますが、原子の並びが乱れると、紫外光と橙、赤色の光が強くなりました。
 このような発光スペクトルは短時間で測定することが可能です。セラミック材料は作成時の焼成具合(焼成温度や時間など)によって結晶の状態が異なるため、同じ名前の材料でも異なる会社から購入するとその質が異なる場合がありますが、CL法とデータベースを活用することで、その質を素早く評価することができます。また、自分で試作したセラミック材料の状態も短時間で調べることができます。今後は、核融合炉環境下での材料試験における状態評価にもCL法を活用できるようにするため、発光スペクトルを調べる対象を更に広げて(すなわち、より多くの材料と結晶の状態を対象にして)データを収集・蓄積し、データベースを充実させていきます。

以上