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平成28年7月13日
プラズマの揺らぎの成長と回転を計算で調べる
-不安定性の線形解析と非線形シミュレーション-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 

 核融合発電を実現するためには、高温・高密度で圧力の高いプラズマを磁場のカゴで安定に閉じ込める必要があります(圧力が高いといっても数気圧にしかなりませんが)。プラズマでは様々な乱れが発生しており、これを「揺らぎ」と呼びます。プラズマの圧力が高くなると、この揺らぎが成長してプラズマが不安定になりやすくなります。プラズマが不安定にならないようにするためには、まずは、揺らぎの性質を理解しなければなりません。これまでの実験と理論の研究によって、揺らぎが回転していること、その回転が揺らぎの成長と密接な関係があることが分かってきました。ところが、揺らぎの回転の向きや速さがどのように決まるのかといった詳しいメカニズムは十分には解明されていません。今回は、この揺らぎの成長と回転との関係を計算によって調べる研究を紹介します。

 大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマのように、磁場のカゴで閉じ込めたプラズマの不安定性と揺らぎの性質を調べる方法の一つとして、「磁気流体力学」というプラズマの理論に基づいた計算手法があります。そこでは、プラズマの運動方程式、プラズマの密度や圧力の変化を表す式、電場や磁場の変化を表す式等を組み合わせた連立方程式を解くことになります。つまり、電気を帯びた粒子の集まりであるプラズマが動くと、密度や圧力に加えて、電場や磁場も変わるため、これら全てをまとめた式を解く必要があるわけです。この連立方程式を計算して、まずは、揺らぎが成長するか否かを調べますが、これには、揺らぎが非常に小さいと仮定して連立方程式を近似的に解く「線形解析」が有効です。
 ここで、線形解析について少し説明を加えましょう。線形解析では、揺らぎそのものは小さい量と仮定するため、揺らぎの2乗や3乗といった高次の量ははるかに小さい量として無視します。すると、連立方程式から、例えば、磁場の揺らぎの大きさとプラズマの密度の揺らぎの大きさが比例するという関係が得られます。これらの関係は、グラフに表すと直線になることから「線形」と呼ばれています。このように、複数の物理量が線形の関係にあることを仮定した解析が、線形解析です。
 この線形解析によって、揺らぎの構造や成長率(時間に対する増大率)等の基本的な性質を調べることができます。また、揺らぎは自発的に回転するのですが、その回転速度も評価できます。ところが、線形解析で得られた揺らぎの回転速度は、LHDの実験で測定された速度よりも小さいことが分かりました。なぜこのような不一致が生じたのでしょうか?その原因の一つは、線形解析では無視していた効果、すなわち「非線形効果」にあります。特に、揺らぎが成長して大きくなると、揺らぎが非常に小さいという線形解析で用いた仮定が成立しなくなるため、非線形効果が重要になります。
 非線形効果を取り入れた計算は、線形解析に比べて複雑で計算量もはるかに多くなります。そこで活躍するのが、スーパーコンピュータです。スーパーコンピュータを用いて連立方程式を計算し、非線形効果も入れたシミュレーションを行いました。この「非線形シミュレーション」の結果、揺らぎが大きくなるにつれて、その構造自体も変化すること、最終的には揺らぎの成長は止まるが、その最終状態に近づくにつれて磁場のカゴが大きく変形することが分かりました。また、磁場のカゴの大きな変形に伴って、揺らぎの回転速度が実験で測定された速度に近づくことが分かりました。さらに、いろいろな場合についてシミュレーションを行い、磁場のカゴの変形が大きいほど、シミュレーション結果と実験結果がより一致することを確認しました。このことから、実験で測定された揺らぎの回転速度は、非線形効果による磁場のカゴの変形に強い影響を受けていると考えられます。
 このように、スーパーコンピュータを用いた非線形シミュレーションは、揺らぎの複雑な性質を理解するための強力な手段です。このシミュレーションを活用して、プラズマの不安定性と非線形効果による様々な影響との関係を、更に詳しく調べていきます。

高い圧力のプラズマの中で成長した揺らぎの模式図です。磁場のカゴで閉じ込められたプラズマはドーナツの形をしていますが、そのプラズマの断面における揺らぎの分布を示しています。揺らぎによって、プラズマの圧力が高くなった部分を赤色で、低くなった部分を青色で表しています。この揺らぎは、反時計まわりに回転しています。

 

 

以上