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平成28年8月24日
高速カメラによるLHDプラズマの画像計測とそのシミュレーション解析
-周辺プラズマ中の塵の振る舞いを科学する-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)では、プラズマを高速カメラで監視・計測しています。市販のビデオカメラは1秒間に30枚の映像を撮影するのに比べて、高速カメラは1秒間に10万枚以上と桁違いの速さで撮影することができます。高速カメラによって撮影されたLHDプラズマのさまざまな現象については、2013年度の研究レポート(バックナンバー204を参照)で紹介しましたが、今回は、その後に得られた新しい計測結果と、それを理解するためにスーパーコンピュータを用いて行った最新の数値シミュレーション解析による研究成果を合わせて紹介します。
 LHDでは、真空容器の中に目に見えない磁場のカゴを生成して高温のプラズマを閉じ込めていますが、その容器の中では、細かな塵(ちり)が発生し、プラズマの周辺を漂っている場合があります。この塵は主に真空容器の壁材料である鉄(ステンレスの主成分)や炭素等からできており、プラズマの中に入り込むと光を発するため、高速カメラの画面上で明るく輝く点として観測されます。この現象は、さながら地球の周りの宇宙空間に漂っている細かな塵が地球の引力で大気圏に突入した際に現れる流れ星のようです。
 多くの塵がプラズマの中に入り込むと、プラズマの温度が下がって、プラズマが消えてしまうことがあります。LHDでは2013年度に、2,300万度のプラズマを48分間という長時間にわたって維持する実験に成功しましたが、この時のプラズマを高速カメラで撮影していたところ、突然、真空容器の壁から塵が発生し、それらがプラズマ中に入り込むことによって、プラズマが消える様子を捕えることができました。塵の発生からプラズマの終了までは、わずか0.2秒以下でした。実験終了後に塵が発生した場所を確認したところ、これらの塵は、真空容器内の壁に混合堆積層と呼ばれる層(炭素の層と鉄の層が混合して形成される)が形成され、これが剥離して発生したものであることが分かりました (詳しくは、バックナンバー273を参照)。
 また、これまでは高速カメラで1方向から撮影していましたが、最近、2つの別々の方向から(ステレオ視)の撮影を開始しました。これにより、1方向からの撮影では困難だった、塵の3次元的な動きを詳しく計測できるようになりました。この計測の結果、塵の多くはプラズマの周辺部に存在し、プラズマの流れに沿って加速されながら移動していることが分かりました。しかし、塵のうちのごく少数はプラズマの流れとは全く関係の無い方向に移動することも明らかになり、このような奇妙な動きをする原因とその物理機構を解明するという新たな研究課題も見つかりました。
 塵の振る舞いを調べるために、核融合科学研究所にあるスーパーコンピュータ(プラズマシミュレータ)を利用した数値シミュレーション解析も開始しました。LHDプラズマと真空容器を模擬した仮想的な3次元モデルをコンピュータの中に構築して、真空容器の壁から炭素と鉄でできた塵をプラズマに向かって放出させた場合のシミュレーションを行った結果、塵の数が少ない場合は、プラズマの周辺部の流れの効果によって塵はプラズマの外に掃き出されることが分かりました。一方で、塵の数が多くなると、塵に含まれている炭素や鉄の原子がプラズマの周辺部でイオン化されることによってプラズマの温度が低下し、プラズマの内部にまでそれらのイオンが入り込んでしまうことが明らかになりました。
 プラズマの長時間維持の実験におけるこのような塵の発生は、LHDのみならず、フランスに現在建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)においても十分に起こりうる現象だと考えられます。高速カメラで撮影されたブラズマの画像解析と、スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーション解析の両面から、塵の振る舞いとそれがプラズマに及ぼす影響を更に詳しく調べ、プラズマの更なる長時間維持に貢献していきます。

以上

プラズマの長時間維持の実験で、プラズマが消滅する時の様子を上側ポート(窓)から高速カメラで撮影しました。①から③の画像は、その時に連続して撮られたプラズマの変化の様子です(上の図参照)。画面の右下(ドーナツ型の真空容器の内側)から多数の輝点(塵)が現れ、それらが左上(プラズマが有る側)に向かって高速に移動する様子が観測されました(①)。その後、これらの塵はプラズマ中に侵入するとともに、塵の数が多くなって太い輝く線に変化しました (②)。この輝く線は急速に太くなってプラズマ全体を光り輝かすとともにプラズマの大きさを縮めてしまい、最後にはプラズマを消してしまう様子(③)が観測されました。なお、これらの現象はわずか0.2秒以下の短い時間で発生した出来事です。