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平成28年11月16日
プラズマの急峻な圧力勾配が引き起こすバルーニング(風船型)不安定性
-高密度プラズマ性能向上のヒントを得る-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)は、トカマク型等の他の方式の装置では達成できないような高い密度のプラズマを、それらと同程度の磁場強度で保持することができます(高密度と言っても、空気の密度に比べるとはるかに小さいですが)。これはヘリカル型の閉じ込め装置の大きな優位点です。このようなLHDで生成されるプラズマは、中心部に特に高い密度のプラズマが閉じ込められているという意味で超高密度コアプラズマ (SDC: Super Dense Core Plasma)と呼ばれていますが、中心部の圧力と周辺部の圧力の差が大きく、圧力分布に大きな勾配ができることからプラズマが不安定になることが懸念されてきました。理論的には1990年代から、バルーニング(風船型)不安定性と呼ばれる特殊な現象が起こる可能性があると指摘されています。このたび、LHDにおいてバルーニング不安定性の特徴を持った現象が初めて観測され、その不安定性を回避する方法を見出しました。
 バルーニング(ballooning)不安定性とは、プラズマの一部が、風船(balloon)のように膨らむことから名前がついています。この不安定性が起こるかどうかは、主に、プラズマの圧力勾配の大きさと、プラズマを閉じ込めている磁場のカゴの状態によって決まります。通常の実験条件では、磁場のカゴに弱い箇所があっても、プラズマはカゴの中を周回していて弱い箇所と強い箇所を次々と通るため、弱い箇所の影響だけを大きく受けることはありません。そのおかげでプラズマはうまく閉じ込められています。ところが、磁場のカゴが大きく変形することを許すような特殊な条件で実験を行うと、ある領域で不安定になりやすい条件が重なることがあります。ドーナツ状の磁場のカゴは何層にも入れ子状になっていますが、その各層の磁力線は少しずつその方向がずれています。この磁力線の方向のずれはプラズマが膨らもうとするのを抑えます。そのため、ある領域で局所的に何層にもわたって磁力線の方向が揃ってずれがなくなると、その部分のプラズマが膨らみやすくなります。また、「磁場の曲率(磁力線の曲がり具合を表す)」が悪化すると、プラズマの変形を助長することになります。悪い曲率とは、プラズマから見て磁場が凸に曲がっている場合を指します。LHDでは、この二つの悪条件が重なる領域で、風船のようにプラズマが膨らんで、バルーニング不安定性が起こることが分かりました。LHDの超高密度コアプラズマでは、このような悪条件が重なる領域は、ドーナツの大半径外側のプラズマ周辺部にあり、磁力線に沿った線状のきわめて狭い領域となります。プラズマから放出される軟X線を観測したところ、その磁力線に沿ったきわめて狭い領域で、プラズマが変形していることが分かりました。
 また、局所的なプラズマの膨らみが大きくなると、プラズマ中心部からの急速な熱や粒子の吐き出しが起きてしまうこと、達成可能なプラズマの圧力の限界値が、バルーニング不安定性が起こるか否かによって決まることが分かってきました。この不安定性の性質を知ることで、不安定性を回避するための良い指針を得ることもできました。そして、その指針を基に、バルーニング不安定性が起こりやすいプラズマの周辺部の圧力の勾配を小さくすることで、中心部からの熱や粒子の吐き出しを防ぎ、中心部のプラズマの圧力をより高くすることができました。このように、プラズマを不安定にする機構を詳しく分析することで、超高密度コアプラズマの性能を大きく向上させるヒントを得ることができました。

以上

図1 バルーニング不安定性が生じやすい領域を示します。上部の拡大図は、軟X線検出器で測定したプラズマの変位の大きさを色で示したものです。大きな変位が赤い色で示した細長い領域に沿って観測されています。

図2 プラズマ中心の圧力の磁場の圧力に対する比 (ベータ値)。△印はバルーニング不安定性が生じて、圧力比をそれ以上上昇させることができなかった実験点を示しています。磁場強度1.5Tの実験では、プラズマの周辺部の圧力勾配を小さくすることで、到達可能な圧力比が大きく向上しています。