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平成29年1月11日
金属微粒子混合による溶融塩の水素溶解度の向上を確認
-核融合炉冷却材への応用に期待-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 将来の核融合炉は、重水素と三重水素(いずれも水素の同位体)を燃料として利用しますが、三重水素は天然にほとんど存在しません。そのため、プラズマで生成される中性子を、電池等でも馴染みのリチウムという原子と反応させて、三重水素を炉の中で生成します。生成した三重水素は、一旦、回収装置に運ばれた後、改めて燃料としてプラズマに注入します。発電のためには、冷却材を使って、核融合炉から熱を取り出し、蒸気タービンを回す必要があります。そこで、リチウム原子を含む液体を利用して、三重水素の生成と回収装置への運搬、さらには熱の炉外への取り出しを同時に行うことが考えられています。
 このアイデアを実現するための液体の候補として溶融塩というものがあります。これはリチウムを含んだ塩(フッ化リチウム)を主体に他のフッ化物の塩を混合し、高温にして溶かしたものです。この溶融塩は、水や大気に接触しても燃焼等の反応をすることがないので安全です。また、核融合炉では強力な磁場でプラズマを閉じ込めていますが、溶融塩は電気を通しにくいため、磁場中でも減速しにくいという性質があります。これは、冷却材として、熱を炉外に効率良く運び出すのに適した性質です。一方で、溶融塩は水素の溶解度が低く、リチウムとの反応で生成した三重水素(水素と化学的性質は同じ)を液体溶融塩と一緒に三重水素の回収装置まで運ぶことが難しいという課題があります。
 そこで核融合科学研究所では、この溶融塩に金属の微粒子を混合することで水素の溶解度を底上げするというアイデアを提案し、これを検証するための実験を進めています。この度、溶融塩フリナック(リチウム・ナトリウム・カリウムのフッ化物を混合したもの)にチタン粒子を混合して水素の溶解度を測定したところ、溶融塩1キログラムに対してチタン1グラムというごく少量の混合量にも関わらず、純粋な溶融塩と比べて、1,000倍以上も水素の溶解度が向上することが確認できました。チタン粒子の混ぜ方が異なる2種類(ナノチタン分散とチタン粉末分散)の試験を実施し、どちらの場合も高い水素溶解度となりました。
 チタンは反応性の高い金属であるため、この成果を核融合炉の冷却材に応用することで、核融合炉の配管等の腐食を抑制することも期待できます。これは、溶融塩と中性子との反応により発生する、フッ化水素や遊離フッ素といった腐食性のある物質が溶融塩に混合した金属粒子と早急に反応して、腐食性の無い物質に変化するからです。なお、将来の核融合炉では、金属粒子中に取り込まれた三重水素の取り出しが必要になりますが、それには高い周波数の電磁波を利用することを検討しています。高周波の電磁波で選択的に金属微粒子のみを加熱(溶融塩自体は加熱しない)することによって、効率的に三重水素を取り出せるのではないかと考えており、研究所では水素を用いてこれらの実験も進めています。今後の研究の進展にご期待ください。

以上

図: チタン混合による水素溶解度の変化(700℃)。1wppbは質量比で10億分の1を意味します。
「ナノチタン分散」(図中央)は、特殊な電気分解法により、1マイクロメートル(1/1000 ミリメートル)以下のチタン粒子を、空気に触れること無く、溶融塩中で直接生成し分散させたもの。
「チタン粉末分散」(図右側)は、38マイクロメートル以下に粉砕されたチタンの粉末を混ぜたもの。