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平成29年3月22日
デジタル分光による電子温度の揺らぎの詳細計測
-電子サイクロトロン放射測定-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 分光と言いますと、プリズムによって光を七色に分けることを思い浮かべますが、光(電磁波)の信号をデジタル化して処理することをデジタル分光と言います。今回は、非常に高い周波数の電磁波をデジタル分光で解析し、プラズマの電子温度の揺らぎ(時間変化)を詳細に計測する研究を紹介します。
 プラズマの電子温度の揺らぎを測定する方法の1つに、電子サイクロトロン放射(ECE)と呼ばれる電磁波を利用した方法があります。プラズマ中の電子は磁力線の周りを高速で回転していますが、その回転時に放射されるのがECEです。ECEには数ギガヘルツから数百ギガヘルツ(ギガヘルツは10億ヘルツ)まで様々な周波数の電磁波が含まれており、それらは連続的な値を取ります。このECEの連続的な周波数スペクトル(周波数に対する電磁波の強度分布)から、プラズマの電子温度の空間分布が得られます。そして、この連続的な周波数スペクトルの時間変化を解析することで、電子温度の揺らぎの空間分布(プラズマのどの場所の電子温度が、どのような速さで揺らいでいるか)が分かります。
 電子温度の揺らぎを高い空間分解能で測定するためには、ECEの連続的な周波数スペクトルとその時間変化を、高速で測定することが必要です。しかし、ECEの周波数が非常に高いため、このような高速の測定は極めて困難とされてきました。また、従来は、アナログの周波数フィルターを用いてスペクトルを測定していましたが、この方法では、本来は連続的な値を取る周波数を飛び飛びに分離して保存してしまい、高い空間分解能が得られないという課題がありました。今回、近年の技術発展により、ギガヘルツを超える速さでデータを取得できるようになってきたこと、デジタル分光を用いることで連続スペクトルの高速測定が可能になることに注目し、最新のデータ取得技術とデジタル分光をECEの測定に応用した結果、ECEのほぼ連続的な周波数スペクトルとその時間変化を、高速で得ることができるようになりました。さらに、時間変化を解析する計算プログラムを改良し、高速化することにも成功しました。
 このように、ECEの連続的な周波数スペクトルの高速測定と計算プログラムの高速化により、従来の方法では高い分解能が得られないという課題を解決し、プラズマの電子温度の揺らぎを、従来よりも、ずっと高い空間分解能で計測することができるようになりました。今後は、この測定により、従来は空間的に細かすぎて測定できなかった様々な現象を詳細に計測できるようになり、高温プラズマの理解が深まることが期待されています。

以上

電子温度の揺らぎの周波数

プラズマ中の電子温度の揺らぎの空間分布。横軸は空間位置、縦軸は揺らぎの周波数、色は揺らぎの振幅(黄色が大きい)を表します。左図は従来の方法(アナログの周波数フィルターを使用)で得られたもの、右図はデジタル分光で得られたものです。画像の最小単位(図中の白線を参照)が、右図は左図に比べてはるかに小さく、デジタル分光を用いることによって、空間分解能が大幅に向上し、より繊細な画像になっています。