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平成29年4月12日
周辺プラズマの理解に向けて
-実験と数値シミュレーションとの比較-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合発電を実現するためには、磁場のカゴに閉じ込められた中心部のプラズマの性能を向上させるとともに、それを取り囲む周辺部のプラズマの振る舞いを理解することも必要です。周辺部のプラズマは、装置の壁の一部(ダイバータ板と呼ばれる耐熱部分、以下「壁」と呼びます)と接することにより、多種多様な現象を起こします。これらを理解するためには、周辺部のプラズマに関わる多様な物理過程を数式で表し、それを基にシミュレーションを行い、実験結果と比較する研究が欠かせません。今回は、その研究の最近の成果を紹介します。
 周辺部のプラズマでは、プラズマに加えて、「中性粒子」も重要です。中心部のプラズマの温度は数千万度に達しますが、プラズマが中心部の閉じ込め領域から磁力線に沿って装置の壁の方へと流れる間に、温度が数万度まで下がります。壁の温度は高くてせいぜい数千度ですが、プラズマは壁に当たるとプラスやマイナスの電荷を失って、電気的に中性な「中性粒子」となります。中性粒子は、装置の壁に跳ね返ってプラズマの方に戻ったり、壁の中に入り込んだりします。プラズマの中に戻った中性粒子は、プラズマとぶつかることにより電離されて(イオンと電子に分かれて)再びプラズマとなります。壁の中に入った中性粒子は、壁の中を動き回るものや、ある場所にじっととどまるものなど様々ですが、何かの拍子に(壁の温度が変わったり、中性粒子などに叩かれたりして)壁の中からプラズマに向かって出てくるものもあります。このような「粒子の循環」は、プラズマの性能向上やプラズマの閉じ込めに重要な影響を与えます。
 さらに、周辺部のプラズマでは「不純物」も重要な役割を果たします。プラズマが壁に当たった時に、壁に含まれている炭素等の元素がはじき出され、それがプラズマの中に入ると不純物となります。不純物はプラズマからエネルギー吸収して、それを電磁波として放射するため、プラズマを冷やします。周辺部の不純物は、プラズマを冷やして壁への熱流を減らしてくれるので、歓迎されます。不純物が周辺部のプラズマの中でどのように分布するかは、プラズマの中で不純物がどのように運ばれるかによって決まります。
 このように、周辺部のプラズマで起こる現象は、多種多様な物理過程が関わっており、極めて複雑です。研究所では、これらの物理過程を数式で表し、それらを計算するシミュレーションプログラムを開発しています。シミュレーションを利用して、周辺部のプラズマの現象を理解して予測し、将来の核融合炉の設計を行うためには、シミュレーションは実験結果を再現できるものでなければなりません。このため、大型ヘリカル装置(LHD)に、周辺部のプラズマを詳細に観測できる計測器を取り付け、その計測器で得られた実験データとシミュレーション結果とを比較する研究を進めています。最近、周辺部のプラズマのどの場所から、どの波長の光が出てくるかを詳細に計測するため、より多くの点を計測できる分光器を取り付けました。中性粒子や不純物が発する光の波長は、中性粒子や不純物の電気的な状態(荷数=何個の電子が剥がれたか)によって異なります。この分光器により、周辺部のプラズマで、中性粒子や不純物がどのような電気的状態(荷数)で、どのような空間分布で、光を発しているかを観測できるようになりました。その結果、壁から戻ってきた中性粒子のほとんどが、中心部に入る前に、周辺部のプラズマで電離されていることが明らかになりました。また、不純物の荷数ごとの発光分布を得ることもできました。これらの実験データとシミュレーション結果との比較を行ったところ、発光分布の大まかな形状はシミュレーションで再現できており、その分布は磁力線の構造と関係していることが分かってきました。今後さらに詳しく比較することにより、シミュレーションで使われている数式のどの部分が実験と合っていて、どの部分が違っているかについても詳しく検証し、その問題点を改善していきます。このような実験とシミュレーションとの比較によって、シミュレーションの予測性能を上げ、将来の核融合炉の設計に役立てていきます。

以上

電子温度の揺らぎの周波数

LHDの周辺部における不純物(炭素)の発光の空間分布。左:新たに取り付けた分光器で計測された実験データ。右:数式に基づくシミュレーション結果。両者を比べることで、発光分布の大まかな形状が、シミュレーションで再現できていることが分かります。