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平成29年5月2日
マイクロ波で不純物を追い出す
-プラズマをキレイにする方法-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合発電を実現するためには、核融合反応が起きるのに十分なほど高温となったプラズマを長時間にわたって維持する必要があります。高温プラズマを維持するための課題の一つが、プラズマの中心部に混入する不純物の制御です。不純物はプラズマのエネルギーを吸収し、それを光として放出してしまうため、不純物の量が増えるとプラズマの温度が下がってしまいます。
 将来の核融合炉では、燃料となる重水素や三重水素以外の元素は全て不純物となります。不純物はプラズマを閉じ込める容器の壁等から発生しますが、重水素と三重水素の核融合反応によって生成される高いエネルギーを持つヘリウムも、プラズマにエネルギーを渡した後は、やはり不純物となります(エネルギーを失ったヘリウムは燃えかすという意味から、ヘリウム「灰」と呼ばれています)。したがって、不純物の量を少なくするためには、単にプラズマに不純物を混入させないだけでなく、プラズマから不純物を追い出す方法を確立することも重要な課題です。
 核融合科学研究所では、大型ヘリカル装置(LHD)において、電子レンジでも使われているマイクロ波を高温プラズマ中に入射することによって、不純物を追い出す方法の開発を進めてきました。プラズマから不純物を効果的に追い出せるかどうかを調べるのは、汚れた衣類が洗濯でどれだけ綺麗になるかを調べるのに似ています。LHDでは、プラズマの周辺部の磁場構造により、容器の壁から不純物が混入しにくい状態を容易に作り出すことができます(詳しくはバックナンバー262をご参照ください)。一方で、プラズマ内部に混入した不純物が出て行かずに溜まってしまう現象も観測されています。この現象を利用して、プラズマをわざと不純物で汚して、その後の不純物の振る舞いを調べました。この実験では、普段から混入しているような不純物(鉄や炭素など)ですと、その微妙な変化が分かりにくいことがあります。そこで、微妙な変化も見逃さないように、プラズマには普段絶対に入ってこないような不純物を敢えてプラズマに注入することにしました。LHDで開発されたトレーサー内蔵固体ペレット(TESPEL)を用いて(詳しくはバックナンバー227をご参照ください)、不純物を外部から意図的に注入し、その振る舞いを追跡した結果、注入後に何もしないと不純物はほとんど減らずにプラズマ内に溜まりますが、不純物を注入した直後にマイクロ波をプラズマに入射すると、溜まるはずの不純物がみるみる減少し、大幅に少なくなることを発見しました。
 このように、マイクロ波を用いてプラズマから不純物を効果的に追い出すことに成功しましたが、今後、より効率的に不純物を追い出すためには、入射するマイクロ波の条件の最適化を進める必要があります。また、このマイクロ波による方法を確立し、将来の核融合炉に応用するためには、なぜマイクロ波を入射すると不純物が追い出されたのか、その原理を明らかにすることが重要です。不純物の振る舞いに大きな影響を与えることが分かっているプラズマ中の電場が、マイクロ波によって変化した可能性が指摘されており、現在、理論と実験の両面からそれを検証しているところです。このようなLHDでの研究により、核融合炉のプラズマにおける不純物の制御手法が確立されれば、核融合発電の実現にまた一歩近づくことができます。

以上

電子温度の揺らぎの周波数

不純物をプラズマに注入すると、不純物はイオンとなって発光します。その発光強度の時間変化を調べました。マイクロ波を入射しない場合(黒線)は、不純物イオンからの発光強度は時刻5.5秒付近までほとんど減少していません(発光によってプラズマの温度が下がるため、5.5秒以降は不純物イオンからの発光強度自体も減少しています)。一方、不純物イオン注入直後にマイクロ波を入射すると(赤線)、不純物イオンからの発光強度はみるみる減少しています。この結果は、マイクロ波を用いることによって、プラズマから不純物を効果的に追い出せたことを示しています。