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平成29年10月25日
ダイバータに優しいプラズマを作る
-磁場構造は色々ありうるようだ-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)では、磁場のカゴで高温のプラズマを閉じ込めていますが、プラズマの粒子は徐々にカゴの周辺部の方へと拡散していきます。このため、周辺部のプラズマをダイバータという機器に導いて、そこでプラズマの粒子と熱を受け止めています。将来の核融合炉では、ダイバータへの高い熱負荷が予想されるため、核融合科学研究所では耐熱性能を高めたダイバータの研究を進めています(詳しくはバックナンバー276をご参考ください)。
 一方で、LHDでは、プラズマをうまく制御することによってダイバータへの熱負荷を低減させようとする研究も行われています。周辺部のプラズマをアルゴンなどの不純物ガスなどで冷却することにより、プラズマの粒子がダイバータに到達する前に、それらを原子や分子にしようとする、つまり、プラズマを中性ガスにしようとするものです。これにより、プラズマがダイバータに到達していた「接触」の状態から、到達しない「非接触」の状態に変化させて、ダイバータへの熱負荷を低減させることができるのです。この非接触の状態を「デタッチプラズマ」と呼んでいます。ところが、デタッチプラズマを作ろうとしても、周辺部のプラズマの制御がうまくいかないと、不純物が中心部のプラズマに侵入し、中心部のプラズマの温度を下げてしまいます。それを防ぐためには、まずは、デタッチプラズマへの遷移の機構を解明することが必要です。
 デタッチプラズマへの遷移には、周辺部の磁場構造が深く関わっていると考えられています。LHDでは、超伝導コイルによって作られるカゴ本体の強力な磁場に加えて、様々な理由によって弱い磁場の乱れが生じています。この乱れを、「摂動磁場」と呼んでいます(摂動は非常に小さい乱れという意味です)。LHDでは、真空容器の外部に設置している補助コイルを使って、プラズマの外部から意図的に摂動磁場を与えてプラズマの反応を調べる研究が行われています。これまで、補助コイルによる摂動磁場(外部摂動磁場)を加えると中心部の高温プラズマが保持しやすくなること、その磁場を強くした方がデタッチプラズマを得やすくなることが観測されています。また、摂動磁場は、プラズマが反応することで、強くなったり弱くなったりします。これは、電気を帯びた粒子の集まりであるプラズマがLHDの真空容器内を動くことで磁場が変化するためです。摂動磁場の強さは、様々なプラズマの作用によって決まりますが、これまで、その強さがある一定の値となる時にデタッチプラズマに遷移するのでは、と考えられてきました。今回、この考えを検証するための実験を行いました。
 実験では、補助コイルによって外部摂動磁場を与えて、プラズマの密度を徐々に上昇させます。密度が上昇すると、プラズマの反応が変わるため、摂動磁場の強さも変わります。周辺部のプラズマのある場所における摂動磁場を観測したところ、プラズマ生成直後の摂動磁場は補助コイルによる外部摂動磁場に比べて弱い(プラズマによって摂動磁場が弱められている)のですが、密度を徐々に上昇させていくと、摂動磁場が少しずつ強くなりました。そして、摂動磁場の強度が補助コイルによる外部摂動磁場の強度とほぼ等しくなったあたりでデタッチプラズマに遷移することを観測しました。補助コイルによる外部摂動磁場の強度を色々な値に設定して実験を行ったところ、同様の傾向が見られました。これにより、デタッチプラズマに遷移する際の摂動磁場の値は一定ではなく、補助コイルによる外部摂動磁場の強さに依存して、色々な値を取りうることが分かりました。これは、デタッチプラズマに遷移する際の磁場構造には様々なものがあることを示唆しています。現在、プラズマが摂動磁場を強める機構がデッタッチプラズマへの遷移のカギを握っていると考え、実験結果の詳細な解析を進めているところです。
 このような研究を通じて、将来の核融合炉に必要とされる、ダイバータに優しいデタッチプラズマを作る方法の確立を目指しています。

以上

実験結果。補助コイルによる磁場(外部摂動磁場)の強度を一定にした状態で、プラズマ密度を上昇させます。摂動磁場が徐々に強くなり、外部摂動磁場の強さと等しくなったあたりで、プラズマがダイバータに接触(アタッチ)した状態から、非接触(デタッチ)の状態に遷移して、ダイバータへの負荷が低減します。