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平成29年11月15日
ペレット入射による燃料供給法の研究
-スーパーコンピュータによる最適化-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 将来の核融合発電では、高温のプラズマを保持するとともに、外部から燃料となる水素を供給し続けて、核融合反応を持続させます。これを実現するためには、プラズマの中心に水素を供給する効果的な燃料供給法を確立することも重要な課題です。今回は、燃料供給法の一つである、固体水素を用いたペレット入射法に関する計算機シミュレーション研究を紹介します。
 ペレット入射法は、マイナス263 度という極低温で固化させた水素の氷の粒(ペレット)を毎秒1km もの高速で、磁場で閉じ込められたプラズマに入射する方法です。ペレットは電気的に中性であるため、磁場の影響を受けずにプラズマ内部まで侵入することができます。侵入したペレットはプラズマの中を溶けながら進んでいきますが、プラズマの温度は1億度もあるため、中心に到達する前にすべて溶けて蒸発して、高密度のプラズマの塊(プラズモイド)になります。プラズモイドになると、電気を持つため、磁場の影響を受けて運動するようになります。例えば、プラズモイドは磁場の勾配があると、磁場の強い方から弱い方に向かって運動します。このような性質を利用して、プラズモイドをプラズマ中心に向かって運動するように制御できれば、効果的な燃料供給ができます。
 ドーナツ形状のプラズマを磁場で閉じ込める装置には、トカマク型とヘリカル型があります。ドーナツ形状をタイヤチューブに見立てると、タイヤの回転中心から近い方の半径と遠い方の半径があります。ここでは、それぞれ内半径、外半径と呼ぶことにします。トカマク型の磁場は、内半径側では強く、外半径側では弱くなっています。このため、内半径側からペレットを入射すると、発生したプラズモイドは磁場の勾配による力を受けて、磁場の弱い方向、つまり最も温度の高いプラズマの中心に向かって運動します。トカマク型の装置では、この性質を利用して、内半径側からのペレット入射により、効果的な燃料供給を実現しています。
 一方、ヘリカル型である大型ヘリカル装置(LHD)では、捩れた形をした超伝導コイルがプラズマを取り囲むように配置されており、このコイルの近くで磁場が強くなっています(トカマク型とは違って、ドーナツの内半径側で磁場が必ずしも強いわけではありません)。トカマク型の結果を参考にして、LHDのプラズマ実験で、コイル直下の磁場の強い所からペレットを入射しましたが、プラズモイドが磁場の弱いプラズマ中心方向に運動することは観測されませんでした。そこで、この理由を明らかにするため、スーパーコンピュータによるシミュレーションを行いました。その結果、プラズモイドの運動は、磁場の勾配だけではなく、「磁力線の張力」にも関係していることが分かりました。
 弦を爪弾くと張力によって元に戻ろうとしますが、磁力線にも同じような張力があります。プラズモイドの運動は、この張力によっても影響を受けます。張力はLHDの内半径側で特に強く、そこでは張力の影響が磁場の勾配による影響よりも大きくなることがあります。そのため、プラズモイドは、必ずしも磁場が弱くなる方向に運動するのではなく、磁場が強くなる方向に運動する場合もあることが分かりました。一方で、トカマク型では、磁力線の張力による影響が弱いため、プラズモイドは常に磁場の弱い方向に運動します。従って、LHDでは、トカマク型と同じ方法でプラズモイドをプラズマの中心に向かって運動させることはできません。そこで、LHD内の様々な場所で、プラズモイドに働く力を計算し、どの場所であればプラズマの中心に向かって運動するかを明らかにしました。今後は、プラズマを閉じ込める磁場の中に「磁気島」と呼ばれる構造(磁気島については、バックナンバー295をご参照ください)がある場合などのペレット入射方法の最適化も行っていきます。

以上


LHDのドーナツ形状のプラズマと三つの断面。プラズモイドが赤丸の位置にいる時は、プラズマの中心に向かって運動しますが、黒丸の位置にいる時は、中心に向かって運動しません。つまり、赤丸の位置でペレットが溶発すると、プラズマの中心に燃料を供給することができます。断面内のグラデーションは磁力線の張力を表しており、青色から赤色になるに従って張力が大きいことを示しています。LHDでは、内半径側で張力が大きくなることが分かります。